著者名 劉貴珍 李敬烈
出版社 新泉社
充実度 4 読みやすさ 3 お勧め度 3 5段階評価
1.本書の重要ワード
⑴治療作用と中医学理論
⑵気功の生理作用と現代医学
⑶内養功
⑷気功療法の特徴と注意点
2.本書の内容
⑴治療作用と中医学理論
ⅰ 気は生命活動の物質的基礎であり、臓腑の生理的活動、機能の表現である。
呼吸の気、水穀の気は全身を潤し養う精微物質に属するもので、元気、宗気、衛気、五臓六腑の気は人体機能の表現に属す。
気は先天・後天の区別があり、元気を先天の気といい、宗気、水穀の気、営衛の気、五臓六腑の気を後天の気という。元気は真気、正気とも呼ばれ、先天の精に生まれ人体の命門に蔵されていて、根本的な動力を備えている。
宗気は自然界から得られた大気と、脾と胃による水穀の消化を経て得られた精気が混ざってできたもので、心臓の血を巡らせたり、肺の気を全身に送る働きを促進させる。営気は脈の中をめぐって全身を栄養し、変化して血液を生じる。
衛気は腎陽に由来し、体表をめぐるもので、内側で陽を固めて外を抵抗する作用を持つ、臓腑の気は、先天の気に由来し各臓腑自体の機能を発揮する。元気は生命の根本、生長発育と各臓腑の活動を始動させる要素で、人体の健康状態は元気の盛衰に決定される。
元気が満ちていれば、後天の気はその影響を受けて、臓腑のバランスはとれ心身は健康になる。気功はすなわち、外においては筋、骨、皮を鍛錬し、内においては精、気、神を鍛錬する、動と静を結合した自己鍛錬の養生法である。
正確に鍛錬しかつ長期間に持続すれば、必ず先天の精・後天の精とともに増強、充実させることができる。
男性における遺精、早漏、生殖不能などは、練功により改善できる。胃や脾の状態をよくして、消化機能の混乱栄養障害にも気功は効果がある。
先天の精は後天の精の栄養により養われているが、吸、抵、撮、閉の鍛錬を行えば陰精は自然に固く充実する。すると腎中の元精も陰精に養われて盛んになり、元気は自ら充実する。これが錬精化気というプロセスである。
気功における鍛錬は、さらに一歩進めて錬気化神作用を発揮できる。神というのは先天の元神と後天の識神の二つからなるもので、元神は先天の元気より、識神は後天の精気より生じたものであり、元神、識神ともに物質からできたものであるが、同時に二つとも物質に働きかける作用を持つ
ⅱ 陰陽を調節する
健康あるいは疾病というのは陰陽のバランスが取れているかにかかっていて、疾病における中心的な問題は、陰陽が離れ、心と腎が交わらないことである。
心陽がその領分を超えて旺盛になるのが陰陽失調における重要ポイントで、陰陽失調に対して、心を虚にして神を守るという練功によって、心・腎交わらせることができれば、心腎はコントロールを取り戻し、陰陽バランスのとれた状態を回復できる。
ⅲ 経路を調え、気血を調和させる
経路には気血を運行させて全身を潤し養う、臓腑を纏って病邪の伝変を司る、体内の情報伝達を司り病気の診察に寄与するなどの作用がある。
経路は、人体の生理・病理・組織・機能などに法則性を持ち、経絡系統は、生体の健康状態に密接に影響している。練功者は心の思うままに特定の部分に気を至らせてその部分の血流を調整することができる。
⑵気功の生理作用と現代医学
ⅰ 神経系に対する作用
練功するものは、意念の運用によって雑念を排し、思い、情緒を浄化し、括淡虚無、精神を内に守るという入静の状態にはいる。
入静は上位神経の活動機能に対して、修復・調整作用をもっている。入静時、大脳皮質では、エネルギ―を消費する活動は減弱し、エネルギーを蓄積する活動が増強するという抑制効果がある。
ⅱ 呼吸器系に対する作用
練功の際、吸気のほうを強調して行うと瞳孔が拡大し、腸鳴が激減するなど、交感神経興奮の生理作用を及ぼすし、呼気のほうを強調して行うと瞳孔が縮小し、腸鳴が増強するなどの副交感神経興奮の生理効果を及ぼす。
人は特有の呼吸法の鍛錬によって、自律神経機能を調節して、健康を維持できる。
ⅲ 消化器経に対する作用
入静によって交感・副交感神経の活動・機能がバランスを得る、情緒の安定が得られる、リズミカルで緩慢な横隔膜によるマッサージが発揮される、大脳皮質の皮質下中枢に対する調整が改善される。
気功は消化器系に対して。亢進するものはこれを中に抑え、弱っているものにはこれを扶けるという、両義的な調整効果をもっている。
ⅳ 循環器系に対する作用
気功が血管機能に対しても影響を及ぼすことが証明されている。熟練者で健康な者の場合、人為的に血圧の昇降をコントロールできる
ⅴ 内分泌系の作用
気功の神経系に及ぼす作用は非常に広範なものがあり、内分泌系は、直接的または間接的に神経系の調整をうけているので、気功が内分泌系に影響するものであることは確かである。
⑶内養功
字句の黙念、呼吸の停止、舌の上下、気珍丹田などを強調するものであり、大脳を鎮静させ、臓腑を動かすという特徴がある
ⅰ 姿勢
側臥式、仰臥式、坐式、壮式の4種類ある
ⅱ 呼吸法
比較的複雑で、呼吸、呼吸の停止、舌の上下、黙然の4要素が組み合わさっている
① 第一呼吸法 吸ー停ー呼という流れで、字句の黙然を組み合わせて、言葉はポジティブなものを選ぶ。呼吸と黙然がうまくいったら、舌の上下を加えていく
② 第二呼吸法 吸ー呼ー停という流れで、黙然は息を吸うときに第一番目、吐くときに第二番目、止めるときに第三番目の字を黙然する
③ 第三呼吸法 難しいので三字で黙然、全体で、吸ー停ー吸ー呼という流れになる。
字句を黙念するのは、思いや感情を鎮めて雑念を排除する作用がある。言葉による暗示によって、言葉通りの生理的効果・反応を与えることができる。黙念は呼吸に合わせて行うので呼吸の速さ、止速時間の長さに影響をもつ
ⅲ 意守法
練功において意念をあるもの、あるいはある形象に集中させることを言うが、精神を集中させて雑念を排除する作用がある。
意守丹田法とは、意念を丹田に固定して守れば、元気は盛んになり、意念を固定する場合、正確な位置にこだわらなくてもよい方法で比較的安全であり、頭、胸、腹部の不快な症状を起こしにくい、同時に、意識を呼吸によるリズミカルな腹壁の運動に合わせて固定すると、比較的容易に意念の集中と雑念の排除を達成できる。
⑺気功療法の特徴と注意点
ⅰ 自己療法
自らの鍛錬で次第に効果を獲得していき、疫病を克服して健康を勝ち得ようとするもの
ⅱ 全体療法
意・気・形の総合的な鍛錬を通して中枢神経系を調え、生体の抵抗力と適応力を増強しようとするもの
ⅲ 生体の潜在能力
外静内動をしっかり把握する、動と静をバランスよくすることが生体の活動を調整することに有効で、また、潜在能力・自己調整能力を高める。
ⅳ 精神誘導
誘導によって姿勢をもっと自然にリラックスさせることができたり、呼吸を次第に深くし、深くて長い腹式呼吸ができる。
3.総括
気功の医療に特化した本で前半は全体的な考え方や理論や実践方法、特徴が書かれていて、後半から、各症状別の処方が書かれている。本格的な内容で、具体的な症状があって、気功で治療したいと考えている人に薦められる本
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