著者 鈴木俊孝
訳 藤田一照
本書をお勧めしたい読者層
・物質信仰主義の世の中で自分の生きる目的があいまいになっている人。
・本来の自分と向き合うことで、他人からの依存や誘惑を断ち切りたい人
・自分主体で意識をコントロールして行動できるようになりたい人。
・利己主義的な生き方から、人とのつながりを大切にする利他的な生き方に変えていきたい人
・周囲の人に振り回されずに、自分の心の感じるままに自然体で生きれるようになりたい人
重要ポイント⑴
「一つの修行があらゆることに及んでいる」と言います。それは修行が、海の波のよう にたくさんの徳を含んでいるという意味です。このような仕方で修行するなら、あなた は石、木、あるいは海のようになります。あなたがあらゆるものに及ぶのです。 継続 的な修行( 行持)が必要です。 一服してはいけません。
どのようにして継続するかと 言えば、もの惜しみしない心、 大きな心、 柔らかな心をもつこと ─ ─ 何ものにも こだわらず柔軟であること ─ ─ です。 このようにして修行するところには、 恐れ なければならないようなものは何一つないし、 無視すべきものも何一つありません。」
解説
座禅にしっかり取り組むことで、物惜しみしない心、大きな心、柔らかな心が身に付きます。このようにして身に付けた心があれば、怖がることもなくなり、無視することも何もなくなります。
重要ポイント(2)
「苦しみの原因を知ることは苦しみをどのようにして避けるべきかを知ることになります。もし、自分がなぜ苦しむのかを学ぶなら、 原因とその結果を理解し、 良くない行い は良くない結果を生むことがわかります。 あなた方はそれを理解できたのだから、 カルマの破壊的な力を防ぐことができます。 」
解説
何故自分が苦しみを感じるのか、その原因は、自然に悪いことだったり、周囲の人に迷惑だったり、何らかの悪い行いが良くない結果を生むことに繋がる。このことを理解すれば、破滅的になるのを防いで、しっかりした生き方ができる。
重要ポイント (3)
「ものごとを空にする ─ ─ あるがままにしておくと、 ものごとがうまく運ぶようになります。 もともと、 ものごとはお互いにつながっており一つなの です。 そして一つ のものとしてそれは自らを展開していきます。 それが自らを展開していくままにして おくため に、ものごとを空ずるのです。」
解説
座禅をすることでいつも自然体でいられるようになります。そうすることで、物事の流れが良くなり、スムーズに運ぶようになります。
重要ポイント (4)
「坐禅をすればするほど、 日常生活に興味をもつようになります。 何が必要で何が必要 でない か、 どの部分を直し、 どの部分をもっと強調すべきかを、 発見するでしょ う。 つまり、修行することによって、生活をどのように調えるべきかを発見します。」
解説
座禅をすることで、無駄な行動を減らし、より重要なことに集中して取り組めるようにななります。
重要ポイント(5)
「 道元禅師が言うように、仏教を学ぶというのは自己を学ぶという こと。自己を学ぶ ということは刻々の瞬間に自己を忘れること〔『 正法眼蔵 現成公案』仏道をなら ふといふは、自己をならふなり。 自己をならふといふは自己をわするるなり〕」 なの です。 そうすればあらゆるもの〔 万法〕がやって来てあなたを助けてくれます。」
解説
座禅をすることで、自分自身が明らかになり、自分自身をあまり気にしなくて済むようになります。そうすると自然と周囲に気が回るようになり、人からの助けも得やすくなります。
重要ポイント(6)
「坐禅をするとき、 大いなる心が小さな心( small mind)を実際に制御しているという のではありません。 小さな心が鎮まったとき、 大いなる心がほんとうほんとうの 活動を始めるのです。 日常生活においてはほとんどの時間を、われわれは小さな心の活動に巻き込まれています。 だからこそ、坐禅の修行をして、大いなる心を回復することに完全に専念する必要があるのです。」
解説
座禅を積み重ねることにより、小さな心を抑える技術が身に付き、そのことにより大きな心を取り戻すことが可能になります。
重要ポイント(7)
「五つの感覚器官の活動をことさらに強めてはいけませ ん。 それらが働くままにして おくのです。 そのようにしてほんとうの心〔 真心]を解放するのです。 日常生活においてそれができるなら、柔軟な心〔 柔軟心]をもつことができるでしょう。 先入観を あまりもつことなく、 思考の悪い習慣も大きな力をふるうことがなくなります。 もの 惜しみのない心と大いなる心をもち、 話す言葉は人々の助けになるでしょう。」
解説
座禅を積み重ねていくことで、五つの感覚器官の機能が良くなります。そうすることで
本当の心が解放し、柔軟な心を持つことが可能になります。先入観がなくなり、思考には癖がなくなり、物惜しみしない心、大いなる心を持つことで、人に役に立つ助言ができるようになります。
重要ポイント(8)
「一呼吸また一呼吸と、 自分の呼吸にとても優しく接していると、 坐禅のなかでさわやかで優しい気持ちが湧いてきます。 自分のからだや息に対して優しい感じがもてる なら、自分の修行を大切に扱うことができます。 そして完全に満ち足りた気持ちがする でしょう。 自分自身に対してとても優しくしているとき、 自然とそういう感じがして くるのです」
解説
座禅をしているときに、呼吸一つ一つに、丁寧に意識を置き続けることにより、やさしい気持ちが湧いてきます。自分の体や息に対して優しい感じがもてるので、自分の修行も大切にできます。修行にも身が入り、充実した時間が過ごせるようになります。
重要ポイント(9)
「若いときは、エゴがたくさんあります。欲望もたくさんあります。鍛練によってエゴをこすり落とし、洗い落としていきます。そうすれ ば、純粋で白い絹のように、とても柔らかくなります。 たとえ強い欲望をもっていたとしても、もし、充分にそれを鍛えることができるなら、 日本刀のような強く鋭い鉄にすることができます。そうやって、われわれは自分を鍛えていくのです。」
解説
若い時はエゴが多いのですが、鍛錬によってエゴをそぎ落とすことにより、純粋で柔軟な心に変わっていきます。強靭な心が身に付き、自分が鍛えられます。
重要ポイント(10)
「心を空にして、あらゆることを手放して、開かれた心でただ坐禅するとき、何を見 ても、 自分自身に出会うのです。それが、 彼女や、彼や、私を超えた、あなたです。 自分という考えにしがみついて、自分の修行を向上させようとしたり、 何かを発見しよ うと努力していたり、向上したもっとましな自分を作りだそうとせずに、大きく開かれた心で座禅をします。」
解説
座禅はあまり、自分自身にがつがつとした気持ちを持たずに、淡々ときちんと行います。心を解放させることで自分自身が明らかになります。
重要ポイント(11)
「あなたたちは精神的であろうとして懸命に努力しますが、それでも依然として一方の 側だけに存在していて、自分のもう一方の側を無視しています。だから、苦しむのです。もしほんとうに悟りを得て、ほんとうの自分を知りたいのなら、良いか悪いか、生か 死かといった考えを乗り越えていかなければなりませ ん。
どうやってやるかと言えば、 坐禅を通してです。何かがやって来たら、やって来るままにします。それを良い悪いといった観点から考えてはいけません。来るに任せ、去るに任せなさい。それが実は坐禅 なのです。」
解説
物事には大抵、二極があり座禅をすることで、両方に対応しなければ聞けません。
良いも悪いも、来るままに任せます。
重要ポイント(12)
「われわれが見るもの、聞くもので完全なものは一つもありません。しかし、不完全さ のちょうどそのただなかに完全なリアリティがあるのです。知的にも、また修行の世界 においても、それはほんとうです。紙の上でもほんとうですし、われわれのからだについてもそれはほんとうです。」
解説
私たちの生きる世界は、完全なものは何一つなく、不完全さと向き合い続けることで、
完全な現実世界が見えてきます。知的世界も修行の世界もどの世界も同じです。
重要ポイント(13)
「いつでも地面の助けがあるという考えにこだわっていると、地面に向かって倒れるということのほんとうの意味を見失ってしまいます。言い換えれば、たとえ誤りを犯しても、どうやって起き上がるかを知っているから問題ないと思って、それと同じ誤りを何度も何度も繰り返してはいけないのです。」
解説
地面に向かって倒れても、直ぐ起き上がればいいという考え方で毎日を過ごしていると、地面に何か、異変が起きた場合に対処ができなくなってしまいます。初めから地面に向かって倒れたら、良くないことが起きる可能性が有ることを想定して行動しないといけません。
重要ポイント(14)
「修行を広げていく道とは、他の誰かになろうとしないで、自分自身をありのままに露 わにしていくということです。 自分自身に対してとても正直であり、充分な勇気をもっ ているとき、あなたは自分を完全に表現することができます。」
解説
座禅を積み重ねていくことで、自分自身を素直に表現をすることができるようになります。いつも自然体で正直で、勇気も出せるようになります。
重要ポイント(15)
「只管打坐を経験しつつ坐ることができているとき、あなたたちの日常生活の意味は完全に異なったものになります。あらゆるものから自由になることができます。」
解説
座禅を積み重ねていくことで、日常生活は、目的がはっきりとし、自分主体でのびのび行動ができるようになります。
重要ポイント(16)
「自分の呼吸に集中しなさい。呼吸が適切でないときには、どんなことであれ身体的な 仕事をすることが困難になります。縫い物をしているときでさえ、あなたの呼吸はその 行為に従ってなされていなければなりません。
重いものを持ち上げるとき、呼吸は完全 にそれと調和していなければなりません。さもなければ、それを持ち上げることはでき ません。適切な呼吸をすることはそれほど容易ではありません。そのためには、適切な 姿勢と、適切な手印( 儀式的な手の形)が必要です。手印は心の状態を象徴している からです。
脊椎がまっすぐでなけれ ば、充分に深い呼吸にはなりませ ん。もちろん、 精神的、身体的なすべての努力を発達させるには 時間がかかります。」
解説
座禅をするときには、呼吸に集中し、気を配ります、適切な呼吸や、姿勢を身に付けることは時間がかかりますが、効果を出すには重要な部分です。
まとめ
座禅をしっかり身に付けて、毎日実践することで、自分自身の心がクリアになり、他の経験と合わせることにより、柔軟な心や強靭な心が身についてきます。そうすることで、人生の難題も解決しやすくなり、生活は、目的がはっきりとした、充実したものになっていきます。
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