著者 波多野登志夫
出版社 剣道日本
お勧めの読者
少年時代にある程度剣道の修行を積んでいて、社会人の剣士として、自分で考えて、大人の剣道を身に付けたい人
本書の概要
本書には、大人になってから、自分で剣道の上達のための課題を見つけて、稽古に取り組んでいくためのポイントを解説しています。
本書の内容
社会人剣士よ正しい剣道を目指そう
- 打たれても、打たれても、勇気を出して、相手を打つようにする
- 社会人のレギュラーを目指すようにする。
- 結婚したら互いに信頼されるようにする。
- 学生時代にレギュラーになれるように頑張り、選手に選ばれなかったら、仲間のために応援するように心がける。
- 会社でも、朝一番に出勤する。
正しい持ち方は、剣道の基本である
- 正しい持ち方は、剣道の基本である
- 竹刀を握るときは、親指にしっかりと力がかかり、他の4本の指が反対方向に力がかかって、バランスよく手の内が治まるようにする
- 指の力の入れ方は、小指が一番強く、薬指、中指になるにしたがって、力加減を無くしていく
- 指同士はなるべく密着させる
- 家でも素振りを行い、脇の締め方、左手の使い方などを勉強する、自分の尊敬する先生の構えをイメージして真似る
- 読書をして、自分を見つめ直す
- 左脇は軽く締める
- 左手の小指は半掛けにする
- 剣先はみぞおちにつける
生涯剣道のためにも、覚えておきたい返し胴
- 剣道には、簡単に打たれないようにするために攻めが必要である。後の先の技においても大切で、攻めて相手を出させて打つのが大事です。
- 返し胴を打つときは、軌道は上から斜め下になることが大事です。
- 自分に近い位置で受けるということは、それだけ相手も近づいているということなので、思い切って手を出すようにします。相手の竹刀に自分の竹刀をぶつける気持ちを持って、相手の竹刀を跳ね上げる。すると相手の竹刀が中心から外れますので、手をできるだけ伸ばすようにする。思い切って伸ばすことにより振り下ろしも鋭くなる。
- 相手の竹刀に自分の竹刀をぶつける時、腰を少し左に回転させます。そうすると、その腰を右に回転させるだけで自然に竹刀を胴へ振り下ろすことができます。
- 腰を回転させるには、膝を曲げる必要があり、相手の竹刀を跳ね上げた瞬間、重心を落とさないといけません。右足を出して足幅を広くすれば、重心は下がります。
- 相手の面を受ける時、手首を返す受け方をしています。手の甲を相手に向ける状態で胴を打とうとすると手を元に戻す必要があるので竹刀も強く返ります。
- 返し胴で大切なのは、攻めて相手を引き出す稽古を繰り返すうちに、相手を面に引き出す技術も身についてきます。
社会人剣士が、切り返しを学ぶ意味
- 切り返しは冴えのある打突に繋がりますが、冴えのある打突を身に付けるためには、正しい動作を身に付けないといけません。
- 左右の手でV時の字を描くような意識を持つことが大切です。左右面を打った瞬間左手はVの字の下にあります。
- 特に左面を打つときは、脇を締める姿勢が大切です。
- 手首をしっかり返すように心がける
- ゆっくりでもいいから、正しくやるように心がける
- 力が抜けるまで、切り返しの稽古を繰り返す
- 元立ちは、自分の竹刀を引っ張り込み、相手の剣先を自分の左右面に届けさせるように心がけて受けます
- 受ける側は、左右に竹刀を動かす際、竹刀の角度を床と垂直にするのではなく、少しだけ開いた傘をイメージし、剣先を自分の側に少し寝かせるようにします。
- できるだけ一息で吸った息で、最後まで打ち切るように心がける。
- 最後の面まで息を切らさないようにする。
社会人剣士が、掛稽古を学ぶ意味
- 掛稽古をする目的は2つあり、一つはスタミナ、持久力を付けること。もう一つは無駄な力を使わないで打つことを身に付けることです。最小限の力で打てている状態を感覚で身体で身に付けていきます。体勢を崩さずに、正しいフォームを保ったままその感覚を取り入れていくことで、理想的な打突に繋がっていきます。
- 掛稽古では元たちが大切です。つねに一足一刀の間合いを元たちが取ってあげるようにすることが大切です。そうすることで、かかりては息を抜くことができずに連続で技が繋がっていきます。
昇段審査で私が心掛けてきたこと
- 受験した回数を気にするのではなく、落ちるたびに自分の剣道が良くなっていけばいいと考えるようにする。
- 落ちる理由を減らしていく
- 基本に忠実に意識して積極的に仕掛けて打っていくことを心がける、すると段々意識しないで、打突が決まるようになってくる。
- 自分が審査員の立場になったつもりで考えてみる
- 毎回の稽古でテーマを設定していどむようにする。稽古が終わったら、その日に設定したテーマが達成出来たら今日は勝ったと思うようにする。
昇段審査で心掛けてほしいこと
- 着装を正しくする
- 相手と剣先を合わせるようにする
- いつでも相手の打ちに切り返せられるようにする
- できるだけ上手の人と、本当の本気の稽古を積む
- 先革が交わっているような間合いでするべきことは、2種類あります。
ひとつは、こちらがグッと攻め入ったときに相手をいつかせることです。
二つ目は、こちらの技が当たるのではないかと相手に思わせて、相手に技を出させることです。 - 打つ前に心の戦いがあり、打つ前に90%のエネルギーを注がないと相手の個々の気持ちは乱れない
社会人剣士が突きを覚える意味
- 突きは相手にとっても嫌な技で、相手を崩すのにうまく活用できる。
- 相手を不快にさせないような突きの出し方を身に付けておく
- 自信が無い時は胸垂れを突くようにする
- 胸垂れ当たりを捉えればいいという感覚で突くようにする。
- 突きたれをとらえたら1、2秒剣先が付いている状態をつくること。
- 発声はつき―と声を伸ばすようにする。突いた腕は伸ばしっぱなしではなく、元の中段に戻す
- 突きは上段対策でも有効です。
- 上段の相手に小手が来ることを意識させておくためにも剣先は左小手につけて少しずつ右に回りながら攻め、そこから突きを出すようにする。
- まず体から出てきます。構えを崩さずにそのままの姿でスーと間合いに攻め入っていきます。それから手を伸ばしていきます。
- 左手と腹の間を空けないようにする
- まず打ち込み台に1万本打ってみて、突き方、持ち方、体重の掛け方を身に付ける
稽古の基本は、構えの見直しと徹底すること
- 八段の先生のいいところを真似てみる
- 得意技は見て盗む
- 技を出す前の仕掛けを見つける
ひとりでできることを突き止める
- 素振りは、ひとりでもどこでもできて、自分の剣道を高められる。
- 振りかぶる時は左手よりも剣先が下がっていることが大事です。
- 胴打ちの素振りも行うようにする
- 足は胴を打った時の状態に広げておき、相手の竹刀を摺り上げて打つ動作を繰り返します。
摺り上げる時に左のこしを若干開き、腰を回転させながら打つことで、竹刀の先端が早くなります。また、腰を回転させることで、竹刀が上から下にいきます。 - 逆胴は、腰の回転を逆にして行います。
- 逆胴は、相手の技を受ける時、自分の手を交差させるようにすると手首が返りやすい。なるべく竹刀の先端が相手の中心にあるようにする。
- 素振りは、実際に相手と稽古したときに活かすことができる素振りを意識する
- 振り上げと振り下ろしの時に、腹筋や背筋を使うことを意識すると鋭い振り上げ、振り下ろしができるようになる。
- 股関節を柔らかくするために、相撲の四股と鉄砲はとても効果があります。
- けが防止や疲労をためない体になります。
- 打った後は残心を心がける
社会人なら、竹刀にも気を配りたい
- 竹刀は柄が太目のモノを選ぶ
- 先が重い竹刀は目的がはっきりしているときに使う
- 竹刀を買うときは、同じ箇所に節のある竹を2本は買うようにする
- 隙間が空いていない竹は溜めがあり、線維が細い竹は粘りがある
- 竹は4,5年めのモノが良く、青みがかった部分が残っている
社会人が気を付けるべき着装
- 面淵には塗料を塗る
- 袴のひだをしっかり整える、アイロンで折り目を入れる。
- 木綿袴はしっかり折りたたむ
- 袴を洗う時は、ひだを作った状態で風呂場に置き、上から温水のシャワーをかけ、足で踏む、そうすることで汗は抜けていく
- 袴は陰干しにする
- 臭いけしのために、防具袋のなかに小さい香り袋を入れておく。
社会人が求めるべきは、相手を崩す攻め
- 中心を取っているということは、攻防一如で、攻める時、守るとき、どちらにも有利な状態であるといわれています。
- 相手に隙があったら打って行き、相手が出てきたらその出はなを打ったり、応じたりする。中心を取るとは、その最短距離にあるということです。
- 心が相手の中心を取るように心がける。
- 心掛けたいこと3つ
- 打つべき時に打つ
- 打ってはいけないときは、打たない
- 打つべきところが無ければ、崩して打つ
社会人が求めるべき、稽古に対する姿勢
- 強い人の稽古を普段から良く見る
- 自分に克つことを考える
総括
本書は、社会人になってから、主体的に剣道に取り組む段階になってから、気を付けたいポイントについて書かれています。八段の先生の経験に基づいて、よく練られて書かれているので、とても勉強になる内容です。
0
コメント