修業論

教養・その他の本

著者 内田樹

出版社 光文社

お勧めの読者

修業とはどのようなものなのかを知りたい人

本書の概要

修業がどのような目的で整備されたのかと、どのような実践的な効果が期待できるのかについて解説しています

本書の内容

武術の稽古を通じて学べるもの

  • トラブルの可能性を事前に察知して危険を回避する能力を身につける
  • 生き延びるのに重要な力、集団を一つにまとめる力を身に付ける
  • 愛と和合を、漠然とした精神的・道徳的な目標にする
  • パフォーマンスの阻害要因(敵と呼ぶ)をできるだけ事前に取り払う能力を身に付ける
  • 敵を作らない
  • 自分がどのような状態にあろうとも、それを敵による否定的な干渉の結果としてはとらえない
  • 生まれてからずっと白刃の下にいる主体だけが、その状態を動線の制約とも可動域の縮減ともとれることなく、のびのびと緩やかに生きることができる。

無敵とは何か

  • 敵は心身のパフォーマンスを下げるすべてのファクターである
  • 無敵はこれらのファクターが一掃された状態であるということである。
  • 敵は私の心身のパフォーマンスを低下させるものである。ある時間、ある場所において、私と共にあり、私を打ち倒そうとするもの、私の可動域を制限するもの、私の自由を損なうもの、私の全能にあがらうもの、私を畏れさせるもの、私を不安にさせるものを敵であると定義した。
  • 敵を無くすためには、それらの敵を敵とみなしてしまう自分自身を無くす必要が有ります。

武道の心構え

  • 未来を予想しないこと
  • 減点法は、他人に対して適用しても、作り出すものより、損なうもののほうが大きい。
  • 武道では本来満点の動きというものは知ることができない。
  • 無知とは知識の欠如ではなくて、知識で頭がぎっしり詰まっていて、新しい知識受け入れる余地がない状態である。
  • 強弱は測定できない
  • 人間の心身の能力を爆発的に開花させようと思ったら、私たちはそのような能力が自分に備わっているとは思わなかった能力を見つけ出し、磨き上げ、その使い方に習熟せねばならない。
  • 身を固くして守りに徹すれば、潜在資源の開発は抑制される。
  • つぼみの開花を待てば、隙ができる。だが、その二つを同時に行わなければ、今の120%あるいは150%の力を出さなければ、生き延びられないような場面がある。
  • 稽古は愉しむように心がける
  • 先人が工夫したあらゆる心身の技法は生きる知恵と力を高めるためのものである

武道修業の目的

  • 経験を積んであらゆる状況にすぐに対処できるようにする
  • 武道家が最優先に開発しようと望んでいるのは、危機に臨んだときの適切な状況判断を下せる技術、心身のパフォーマンスを必要な時に爆発的に向上させて生き延びる技術である
  • 適切な状況判断ができないのは、遭遇した出来事が想定外だからである。
  • どう対処していいのか分からない、何かが起きるまで立ち尽くす。そして、全身のセンサーの感度を最大にして、何が我が身に起きたのか、起きつあるのかを知ろうとする。この状態を武術的には狐疑と呼ぶ。
  • 何が起きるのか待つ構えは、原理的に後手に回る、どれほど迅速かつ的確に反応したとしても、そもそも反応するということが遅れることを前提にしている。
  • 狐疑に居ついている相手はこちらの望むように導き、こちらの望むような姿勢をとらせることができる。

  • 主体と客体の二元性が溶融した状態、入力と出力という継起的なプロセスが無い状態を、武道の用語では機という。
  • 禅家も武士も機を重んじる。先手を取るというのは、相手の動きを予測して、相手が動き出す前に動き始めるということである。
  • 私たちは武道をやることによって、自我という、平時において有用だが、危機においては有害な額縁装置の着脱の訓練をしている。
  • 修業はそのようなことが人間にできるとは思わなかったことを、自分ができるようになるというのが、修行の順道である。
  • 原理的に無駄な稽古というものはなく、いくらやっても上達しないというのは、得難い経験で、なぜ、これほど稽古してもうまくならないのかという問いをまっすぐに受け止めて、稽古に創意工夫を凝らしたものは、出来のいいプログラムを丸のみして無駄無く上達して、ついに悩んだことがないよりも、しばしば深い

  • いるべき時に、いるべきところにいて、なすべきことをなすことができる能力。それが武道修行が開発すべき能力である。
  • 維新の立役者は、剣技の修業を通じて。総合的な能力を涵養したのだと考えられます。
  • 武道修業の目的は、危機的状況を生き延びるための能力だからです。例えばどこでも寝られる、何でも食える、誰とでも友達になれるという能力のほうがはるかに有用です。
  • 手元にある有限な資源を、最大限に活用するというのは、武道家の基本的な構えである。

総括

本書は、武道家が行う修業が日常生活でどのように生かされているかを説明しています。修業は、危機から身を守ることが一番の目的であり、平時という状態に慣れ切った現代人が、大惨事を引き起さないようにするためには、とても重要であると考えられます。

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