剣士なら知っておきたい「からだ」のこと

剣道関連の本

著者 木寺英史 小田伸午

出版社 大修館書店

お勧めの読者

現代剣道の一般的な指導に疑問を持ち、もっと合理的な身体操作を身に付けたい人

本書の概要

本書は、剣道の合理的な姿勢や、足のさばき方、竹刀の振り方を解説しています。

本書の内容

知っておきたい剣道の「動き」のこと

現代人と昔の武士とは歩き方が異なっている

剣道で右自然体で構えるのは理由があり、右足と左足の働きが異なっている

剣道の大きく振りかぶる素振りは実戦で小さく速く打てるようになることには直接結びつかないが、竹刀は日本刀の代わりという考え方があるので、正しく剣を振るということを身に付けるために行われている。

知っておきたい「足さばき」と体のこと

二直線歩行を習得する

剣道では二直線の歩行が用いられる、歩くときに、両足が、平行に前に進むように心がける。歩幅を一定に保つ。普段の歩き方で、一直線歩行をしている人は修正する。一直線歩行は両足の真ん中の線に沿って歩幅を空けずに交互に右足と左足を動かして前に進める歩き方である。

踵が低い靴を活用する

歩行を安定させるために足先と膝を少し外側に向ける

ナンバ歩き

手と足の運びが同じ歩き方。例えば右手と右足を同時に前に出して直進する。右と左の動きを交互にして前に進む。

片踏み

半身姿勢のまま歩くこと。例えば剣道の場合は右自然体のまま前に進める

侍の歩き方

腰を落とし気味にして胸を自然に張り、からだ全体を腰から前に出すようにして歩く

着地側の腰を前に押し出すようにして歩く

トップランナーの足の運び方は、地面を後方に蹴らずに、遊脚(地面から浮いている足)を素早く前方へターンオーバーさせることで後方スイング速度を上げている。

剣道のすり足の覚え方

右足を前進させるときに、左足の踵を支点として、右足の膝をつま先よりも前に来るように前進する。この動きを、膝を抜くという。右足の前進が止まり踵が下がっていきます。右踵が接地するとほとんど同時に左かかとが上がり同じように左ひざから左足が前進します。この動きを繰り返します。

膝を曲げると同時に骨盤を前傾させる。骨盤を前傾させると自然に胸が張ってくる。

すり足はつま先で接地して踵で離地する。踵で離地するときには、足裏全体がパッと一瞬で離れる感覚になります。

一般的な剣道の指導では、左の踵は上げて移動すると教わるが、踵を踏んだほうが、前に体を運ぼうとする力が働くのでパフォーマンスが上がる

膝を抜く

膝を抜くことで、筋力に頼らずに重力を上手く使うことで動けるようになります。

片足立ちから一歩前進する

左足で片足立ちをして、その踵を踏みながら膝をパッと抜いて一歩前に出る

前進をするときには、拇指球付近に重心をかけずに、踵に体重をかけて右ひざを抜くようにする

左右に動くときは、右左のそれぞれの足の外側で体を支えて、膝を上手く抜いて左右に移動する

体の向きを90度換えたいときは、左に向きたいときは右足のアウトエッジで体重を支持しながら、左脚の膝を90度開いて左に向けます。右の時は逆の動きをする。

顔の向きを体の向きを変えたい方向に合わせるとスムーズに体が回転する。

知っておきたい「構え」と体のこと

剣道の腰を入れた構えとはどういう構えか

合理的な身体操作の基礎となる立ち方は、まず足を肩幅、つまり骨盤幅に開く。足先はやや開き、膝頭を足先と同方向に向けます。次に膝を少し曲げて、骨盤を前傾させます。腰椎あたりを押し出して骨盤を前傾させるのではなく、お尻を少し後ろに引くようにする。

骨盤の上に上体を乗せて立ち、腕はだらりと下げて、顎を少し出すようにする。骨盤が前傾するので、自然と胸が張られて体幹にアーチが作られます。

二軸動作の立ち方は踵に重心を落とすようにする、しかし現代人は拇指に重心がかかる靴を普段履いているので、これが苦手な人が多い、踵に重心がかかる立ち方を身に付けるためには、立禅が効果がある。

肩甲骨を柔らかくして、顎は少しだけ出すようにする。顎を少し出すことで、肩甲骨の働きが良くなる。

剣を振る時に、表情筋を緩めると肩甲骨が緩んで体全体の動きが良くなる

骨盤を前傾させて、顎を少し出した姿勢をすると、左こぶしと左かかとの位置が下がってくる。左かかとも、骨盤を前傾させることでさがる。

肩甲骨は外側にだらりと滑り落ちた状態が理想です。このような状態を肩甲骨が外放しているという。肩甲骨の外放を習得すると、左こぶしと踵が下がった安定した構えになります。

肩甲骨の外放を覚える方法

左右の足を肩幅程度に開いて立つ。両足とつま先と膝は少し外を向け、足裏の小指から踵に体重をかける。骨盤を前傾させて顎を少しだす。この立ち方で両腕を前後に振るようにする。

上腕を外旋させる

立った状態で前に倣いをしてみる。両肘を伸ばしてほぼ水平に体の前に上げた時、肘の曲がる向きを確認する。肘の向きが上を向いていることを外旋しているという。

上腕を外旋させるには、腕立て伏せで、両手を逆ハの字にして行うと、効果がある。

スポーツ選手の腕を締める動きは、上腕を外旋させるために行われている。

股関節の外旋・外転の動きを使いこなすために、股関節を外旋させて左足を外側に向けるようにする。相撲の四股は、股関節の機能を高めるトレーニングである。

知っておきたい打突と体のこと

現代剣道での打突動作

普段教えてもらっている動作は、右自然体の構えで、両足は平行の状態で、左足を後方に蹴って、直ぐに左足を引き付けるというものである。

このような動きを中心軸動作という。このときに左足は意識的に前方に送り込まないといけない状態で、前進させようとするときに、重心は斜め上方へ持ち上がることになります。重力に反して、筋力で動かそうとしている。

合理的な動作

合理的動作では、重力を上手く活用する。重力を利用するには、膝の抜きや踵を踏むという操作を習得する必要が有ります。

合理的動作を習得すると、体幹を柔らかく使って、同側の肩と骨盤を同方向に動かすようにする。竹刀の振り上げの時は、左腰と左肩が押し出され、振り下ろしの時は右腰と右肩が押し出される。

常歩歩行が習得されると、出ていく足に対して反対側の腰が前方に動く、構えから右足が出ていくときに左腰が前進する。これによって、後方の足が自然に前方に振り込まれる。これは腸腰筋の働きによる。

歩み足で正面打ちをするときに、振りかぶる時に、左の肩を少しだし、右の肩を少し引きながら同じように竹刀を振るようにする。肩の回転によって、身体の動きを竹刀に伝えることができる。

多少左肩を前にして右肩を引くことで体幹の動きを使って振り上げることができる。そうすると腰の動きと肩の動きが直接連動する。

この右足前進で振り上げ、左足前進で振り下ろすのが、合理的な動作となる。最初に着地足側の腰が前にでる侍の歩き方を身に付けることで、右足前進で振り上げ、左足前進で振り下ろす連続面打ちが身になります。

合理的な竹刀の振りを身に付けるためには竹刀を大きく振る

竹刀を大きく振り上げる動作を繰り返すことで、肩甲骨が柔らかくなる。竹刀を振りかぶる時に、両肘を開くことで、竹刀を大きく振りかぶることができる。そのまま肘を閉じながら、上腕を外旋させて肩甲骨を押すことで、力強い打突ができるようになる。

打突をするときに、右足を前方に出す。この時は左足は体を支えている状態である。右足の膝がつま先よりも前にでるように、相手に突き出すように上げると、からだが素早く前進できる。

合理的な動作の時、左膝を抜いて、膝を屈曲させながら右足を前に出すと、重心を前方向に落としながら前進することができる。左の踵は接地させるようにする。この方法で前進すると、水平に体を移動できるようになります。

二軸で前進するときには、左足に重心が乘った状態で、踵は下がった状態で、反対の右足を動かして移動する。

前進するときは、左足が右足よりも前に出ても問題はない。

胴技を歩み足でできるようにする。

右足前進で振り上げて、左足前進で振り下ろすようにする。歩み足で、左足を踏み込みながら逆胴を打つ練習をする。

左足から出て打つ練習をする。右の踵を下げた状態で、踵で体重をささえながら、右の膝を抜いて体を前進させる。小手打ちで特に効果がある。

二軸動作の剣道の場合は、右自然体の構えから、体幹の向きを変えずに打突をする。

左足の向きは、足先も膝も斜め左を向いているようにする。股関節を有効に利用するために、膝の向きを左斜め方向に傾ける。こうすることで、股関節の外旋、外転を利用することができる。

竹刀を振る時の前腕の動きは、打突動作で、上腕の外旋を上手く使えるようになると、打突時に肘の曲がる動きが上を向くようになり、意識的に前腕を回内する必要がなくなります。

素振りをするときは、竹刀もより軽いものに変えていき、竹刀などの重みを感じるように振る。動作に不必要な力が入っていると振ることができない。

体幹の動きを四股に伝えられるようになれば、必要以上に筋力をつける必要は無い。

総括

本書の内容を理解して稽古に生かせば、しっくりしたキレのいい動きができるようになります。

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