剣道攻めの極意

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出版社 ベースボール・マガジン社

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剣道の攻めを磨きたい人

本書の概要

本書は、剣道界で、第一人者として実績を積まれている、選手、先生方が自らの稽古で培ってきた、剣道の攻めの極意を分かりやすく解説しています。

本書の内容

攻めの極意1 

実戦の攻め

櫻木哲史先生

一番重要なのは足であり、先に打つこと、仕掛けること、とにかく前に出ることが大事である。

全力を出し切ったうえでの結果で、たとえ負けても、このタイミングで打って行ったから返された、あるいは打たれたというふうに、自分で反省することができるので、次のステップへのヒントに繋がります。負けることには、2パターンあって、一つ目は中途半端にさがって打たれることで、これは得るものが少ない。

二つ目の前に出て負けるということは、全身全霊をかけて打ち込んだ時の自らの筋力的な面、スピードや瞬発力などを養う上でも重要です。さらに打突に至るまでの感覚、更に精神に至るまで、自らの課題を自らが少しずつ見出すことができます。

負けた時は、相手が自分に足りないことを教えてくれたということで、相手に感謝しないといけません。そういう前向きな取り組みかたが攻めを培うと同時に、更に経験を積むことによって自身の力の向上につながります。

剣道は年齢とともに深化していくものです。身体能力は歳をとるにつれて衰えてくるので剣道家は鍛錬を積む必要が有ります。剣道の攻めを深化させていくとともに、体力も維持する必要が有ります。

面が速いという長所を備えていれば、相手にとってはとてもプレッシャーになります。戦う以前に精神的に優位に立つことは勝負では大切です。

戦う時には最初に、相手の力量や剣風を探ることが大切です。相手が何が得意かという分析ができていないうちに、自ら打っていくのは無謀に等しい。剣道は頭を使う必要があり、目で見て、頭で考えて、足で打つことが大切です。

悲しい結果にならないためにも、99%の確率をもって一本にできるように精進するのが攻めの極意です。無心の技は、言葉で説明できないから無心というもので「見る、考える、打つ」を同時に行ったものが、結果として「無心の技」といえます。

相手を攻める時、基本的には、心・気・力を充実させて上から乗っていきます。相手がどう反応したかによって、剣先で押さえる、払う、はじく、張る、巻く、打ち落とすなどのバリエーションが生まれます。

本来の究極の攻めは、相手の中心をねじを巻くように絞り込んで、絞り込んで、さらに絞り込んでいくもので、相手にとって、中心の奪い合いに負けることは、不安要素を大きくします。相手がその不安要素を一掃しようと攻めてくるので、その起こりを捉えるようにします。攻め合いの中で、敢えて相手に打ち気を起こさせて打つことが大事です。

剣道の技は、いつでも一本が奪えるように研ぎ澄ませることが大事で、左手を挙げて、相手の面や小手を防ぐことは無くすように修業しないといけません。

攻めの極意は上から乗ることで、目に見えない鍛錬、普段の稽古で絶対に気を抜かないようにすることが大切です。

攻めの極意2 

馬場欽司先生

打ち込み台を用意して、一人稽古で攻めを磨く

動かざる仮想の敵に対して、気、剣、体のすべてを集中させて身構える。そして目付け、手元、腰、足元、呼吸に至るまで一点の気の緩みもないぞという気構えで仮想の敵に対し、攻めから攻め崩し、さらに打突、残心までをイメージする。

気が充実しまさに沸点に達したら、その気を一気に爆発させるように大技でもって面を打っていく。普段の心がけが大事である。

打ち込み台までの距離は一足一刀から始めて、気・剣・体が一致した充実した一本を打てるようになるよう心掛ける。少しずつ距離を伸ばしていく。相手より遠い所から打てるというのは絶対的な自信になります。打突においては、たとえ意志のない打ち込み台であっても、捨て身の覚悟で打つことが大事である。

剣を交える時には、相手に合わせるようにする。剣道形は相手との調和、そして相気によって打ち破ることを徹底して教えてくれます。戦いには、決して相手とぶつかり合うだけではなく、調和をすることが大事です。心を打つのが剣道であり、相手に感謝するという気持ちが大事です。

最初に正中線をとり、相手がそれを許さない場合には、竹刀をはる、はじく、抑える、巻く、それで相手を崩していって、最後には乗る。気攻めで持って行って、絶対に揺るがない不動心で、相手に入り込んでいきます。非常に高いレベルの集中力が問われます。

まずは相手の竹刀を物理的に崩す作業が必要です。張ったり、はじいたり、巻いたり、払ったりすることによって崩していく。相手の剣を不自由にしておいて、勢いを殺して、出鼻をくじく、それによって相手が中途半端な形で出てきた場合、今度はその技を殺す。摺り上げたり、打ち落としたり、巻きつけたり、返し技をだす。そうしているうちに、相手の心が崩れていく。

攻めと打つはイコールではなく、攻めの部分で大半は終わっている。懸待一致という言葉があり、打ちにかかる時にも待ちがあり、待つ中にも懸かるがあります。攻めつつ守り、守りつつも攻める。これを実践するためには強引であってはいけない。

最初に正眼に構えたときに、遠くのものを近くに、近くのモノを遠くに見る遠山の目付で、体全体で上から乗る気構えで臨むことが大事です。剣先は、相手のみけん、あるいは喉元につける。正中線をとるときは、鎬をつかって、相手に乗ることが大事である。剣先を通して、こちらの気を相手に伝える気持ちで臨む。

剣道では、相手の力を利用することが大事で、相手に心の動揺、息苦しさを生ませて、相手に先に行動をさせることが攻めの本義である。

普段の稽古から浮かない心と浮かない形つくり、攻め切ったと確信した刹那、一撃必殺の一本を勇気をもって飛び込むことが大事です。

攻めの極意3

神崎浩先生

構えは、攻防一致である必要があり、いつでも打突していける状態であることと、相手の攻撃に対して迎え撃ったり、かわしたりできる準備の両方ができていることが大事です。これを懸待一致と呼びます。

姿勢のポイントは、踵、膝、腰、肩、拳が重要です。

踵 左足に体重を乗せて踏み切るためには、爪先をまっすぐ相手に向け、つま先たちにならないようにする。

膝 打突時の前方への併進運動がスムーズに行われるためには緩まない、突っ張らないようにする

腰 右腰よりもやや後ろに位置するが、臍を相手に真っすぐ向ける意思を持つ

肩 力が入って上がらないようにして、後ろに引く感じで胸を開くようにする

拳 親指の第一中指骨関節が臍の高さで、拳は臍よりも少し低い位置にする。

目付

注視点は相手の眉間にして、そこをかえないことで相手への集中力を高めます。

竹刀の握り方

竹刀の握り方は、攻防動作に伴う竹刀操作がスムーズに、場合によっては力強く行えるように、強く握りすぎず、緩みなくということが大事です。

剣先は相手の正中線上に付け、竹刀の延長線が、相手の喉元から顔の中心くらいの高さにする。

構えた時の全体の意識は、肩の力を抜いて、下腹と左の拳が充実し、腰が入った感じを持つ

攻めどころ

相手が退いたところ

対峙した攻め合いの中で相手が後ろに退がるのは、こちらの攻めの圧力を回避する現象ととらえることができます。

追い詰められたところ

打った後に、特に相手の後ろに空間が無い場面では、複数の意識を相手は持つことになります。

打ち焦っているところ

どうしても一本取りたいと相手が思っているときに、こちらのわずかな機会でも容易に狙ってきます。

防御に徹しているところ

防御するところはその他の部位に隙をつくることになります。

攻めの実際

崩しから打突に至る一連の動作では、運動の先取りが重要です。自分の運動の先取り、と他者の運動の先取りの二つが有ります。

自分の運動の先取りとは、目的に応じた運動ができる体の備えをすることです。

他者の運動の先取りは、相手の観察を通して、相手の未発の行動を予測することです。

一足一刀の間合いに入る

間合いの入り方を、歩幅を大きく、小さく、タイミングを速く、遅く、角度を直線的に、やや右斜めからなど相手や場面によって工夫する

構えを崩す

相手の剣先の方向をこちらの正中線から外す必要が有ります。相手の竹刀を押さえる、払う、巻く、打ち落とすなど。このような崩しを試みた瞬間にできた隙を捉える方法です。

崩しと打突の時間差ができるだけできないように竹刀操作や打突操作を敏捷にしないといけない。

剣先で相手の顔の真ん中を突く

相手の意表をついて、勢いよく一歩前に進みながら剣先で相手の顔の真ん中めがけて突く動作を示します。それによって変化した相手の状況によって打突します。

受け止めた所を打つ

実際に相手の打突部位を打突したときに、相手がどのような防御をするのか観察して、そこにできた隙を連続技の要領で打突する方法です。

相手の打突を誘う

間合いを詰める、剣先を上げる、下げる、開く、相手の打突を誘う動作を示し、それに呼応した相手の打突に対して出端技や、応じ技を用いる方法です。

単一フェイント動作

打突動作の途中でフェイントを入れる

ダブルフェイントをいれる

よりフェイント効果を出すためには、二つのフェイントを連続させる必要があります

中心を攻めて打つ

積極的な崩しを行わずに、相手の中心への攻めを意識してそこでの相手の勝手な崩れを捉えて、打突する方法です。

攻めの極意4

初心者の稽古法

山下克久先生

一番大事なのは、日常生活から常に先に先にと行動を起こすことを心がけています。相手に攻め込む怖さを少しずつ払拭すると同時に少しずつ自信をつける。

地力をつけるために、掛稽古では、ひるまずに、くじけずに果敢に打ち込んでいくことが大事です。最後の気力を振り絞ってさらに踏ん張っていく。努力に応じて強くなる

試合で、相手が休みたくなる場面で打てるのは、普段から稽古をしている証拠である。

どういった機会に打っていくか、こう攻めれば相手のここが空くなどは、自分らの経験で積み重ねるしかありません。

当たり前のことを当たり前にということが大事です。剣道だけではなく、日常生活にもあてはまります。挨拶などでも、自分から積極的にするように心がけます。剣道の、常に先を心がけている人間は

失敗することもあります。しかし何回も反省して積み重ねるうちに身についていきます。

攻めの極意5

馬場欽司先生

武道に学ぶ五感の磨き方

昔の剣道家は、初めの一本を大事にしていました。その日の稽古の最初の立ち合いのことで、一本目で打たれたらその日が負け、という緊張感を自分に課しました。そうすることで感覚が研ぎ澄まされていきます。

常に不自由な状況になったときを想定して生活するようにします。不測の事態に対応するためには、常に敏感なアンテナを張っておく必要が有ります。

普段から天地自然に触れることが大事

遠山の目付で、全体を見る。眼球を動かすときは、できればなめらかに動かす。そしてふわっと真綿のように目で相手を包み込む。最初は呼吸・リズムを知ることが大事です。

一流は、敵も自分も動くことを前提として訓練します。外見だけではなく、内面を見抜く目を養う。目が使えなければ、音を聞く。風の流れを読む。手で考え、足で思考するようなレベルまで感覚を鍛える。

剣道放談

井上義彦先生

せめるには二つの意味が有る

一つは、相手に対して攻撃をする攻め、もう一つは自分自身の内面を責めるということ。最近の日本においては、自分自身の内面を責めるということが不足している。そのため人としてのバランスを崩しています。個人の攻めと責めのバランスが崩れると、社会のバランスも自然と崩れる。

相手と対峙して竹刀で打ちあうということは、言い換えれば、相手の欠点を竹刀で指摘してあげるということです。自分が撃ち込まれたら、相手が欠点を教えてくれたということになります。

結果お互いが反省をすることができて、綺麗なバランスがとれて、お互いを教えあい、お互いに成長することができます。これが現代剣道の長所となっています。

お互いに向上しあおう、生きあおうという剣道を活人剣と呼びます。他者がいるから自分も生きられるという感覚になります。これに対し、相手を責めるばかりの剣道を殺人剣とよびます。

相手を攻めた後は、直ぐに反省して自分を責めないといけない。攻めが生じれば、責めも生じる。真剣で相手を切っていることを普段からイメージする。

攻めの極意は捨て身です。

剣道競技的な捨て身と、真剣に命を懸けて戦う時の捨て身があります。捨て身とは、自分を捨てて無くすこと、無の境地に至ることです。

無意識に身体が動くレベルになるためには。一つ一つの技術と心の在り方を、繰り返し、繰り返し修練しないといけません。間合と正中線の取り合いを理解するためには、毎日のたゆまぬ鍛錬が必要になります。最終的には体で覚えないといけません。

正中線とは、相手の真心を自分のものにする。自分の真心を相手に伝える。これが精神的な正中線の取り合いです。

真実の心には、向け方、与える強さ、伝えるタイミング、が必要です。そういうものを身に付けた人はどんな相手でも、自分の剣道ができるようになり、相手を正道に導く剣道ができるようになります。

最も素晴らしい剣は向かい合っただけで相手に剣を下ろさせることです。

剣道はもちろん、物事をなす際にいつも忘れてはいけないことがあります。それは三無です。無理、無駄、斑がそれです。

無理は天地自然の理に反した動きをしていることを言います。

無駄は体力をまともに使わないことです。

斑というのは、行動や思考に一貫性が無くムラがあるということです。

正中線を取ったときに有利になるのは、刀の切っ先を合わせた時に、相手の力を利用して、自然に逆らわない動きでもって、くるりと自分の剣が相手の正中線に向かっているようにすることです。

正しい心で物を見れば、実態がありのままに映ります。実態がありのままに映れば、その状況に応じた最良の動きができます。

相手を飲み込むオーラを身に付けるためには。心技体をバランスよく鍛える必要が有ります。

命のパワーを凝縮させることを気合をいれるといいます。命がけの気迫は相手を飲み込むオーラをもっています。

理想的な手の内は、肩関節、肘関節、手首、手のひら、指とすべての関節を柔らかく使える状態にしておくことです。指は、小指と薬指に力がかかるように握ります。

普段から左に意識をするように心がけます。

人間は何かに一生懸命になれば、そのほかのことは気にならない生き物です。一生懸命ならそれに集中できます。集中すれば、雑念もなく、無心になることができます。一生懸命になるためには、自分が好きなことをやるのが一番良いことです。

剣道は激しいものです。それは不屈の闘志、強固は体力を要します。

剣道は静かなものです。それは美しい姿勢、清い心を擁します。人は厳しい鍛錬によって磨かれます。一生懸命剣道を練習することによって強い意志、どんな失敗も跳ね返す気力、強い体、正しく明るい心をみにつけることができます。

この体と心こそが社会を良くし、日本を発展させ、世界を平和にし、人類を幸福にします。

総括

本書は、実績を十分に積まれている、第一人者の先生方が、自身の剣道修業で身に付けた攻めの極意を読者が理解しやすいように、丁寧な言葉で説明しています。本書を読み込むことで、普段の相手に対峙する時の心構えが身に付きます。

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