著者 馬場武典
出版社 体育とスポーツ出版社
お勧めの読者
剣道に関する礼儀作法の方式と原理をしっかり理解して身に付けたい人
本書の概要
剣道にまつわる礼儀作法、道場での態度、先生や仲間への礼儀、道具や物を大事に扱うこと、試合中のマナー、稽古中の態度などの心構えや決まり事と決まり事がある理由を解説しています。
本書の内容
日本人と剣道
剣道の意義
剣道は人生を豊富にし、人類を祝福するであろうその香気を持っていて、この武道が培ってきた高貴な香りを、日本の古きよきものとして「剣道の礼法と作法」の中に求め、剣道に励む子供達に伝える必要が有ります。
最近は国際化が進み、国際交流が盛んになっていますが、それに伴い、日本人としての特色がだんだん薄れてきています。日本人としての民族性をしっかり身に付けるためにも、剣道を学ぶことには意義が有ります。
日本人としての良い性質、勤労、教育、忍耐、犠牲の精神を、武道をすることで身に付けていきます。
民族性としての誇りを持ち、礼儀正しく、貧しさによく耐え、物を大切にして、自分に厳しく律するように躾けることが大切です。
勝利至上主義の弊害
試合のみだと、勝利至上主義にかたよるので、剣道形で、礼法、作法を学ぶ必要があります。日本剣道形と普段の稽古を組み合わせることで、すべてのバランスが保たれます。
道場の意義
剣道の指導者が道場をどのようにとらえるかで、道場は、単なる練習場になったり、運動する広場になったりします。また心の分野の向上をも目指す神聖な場にもなります。
人間形成の場としての役割を果たすようにするために、環境を良く整える必要が有ります。道場の神棚は、道場は神聖なもので、大切に扱わないといけないという気持ちを共有することに意義があります。
道場や仕事場だけではなく、また山や川、大木などの自然物や竈や井戸、囲炉裏なども神聖なものとして大切にしてきました。
神棚は神聖な雰囲気を作るのに役に立っています。
竹刀を大事に扱ったり、礼儀作法を普段からきちんと行うことで、物を大事にする心や他人に細かく気を遣う心が養われます。
上座と下座は、陰陽五行説が元になっています。
道場での礼法・作法
- 履物を揃える
- 道場での入退場
- 神棚に向かって礼をする
- 立礼をしっかりする
- 挨拶をしっかり行う
- 竹刀袋は提げ刀で持つ
- 道場は常に清潔に保ち、雰囲気作りを行う。清掃やふき掃除を行うことで、心身修業の機会を設ける。
- 道場での姿勢を正す
- 防具や竹刀を大切にする
- 準備運動は全員で行うようにする
- 竹刀袋や防寒着などの整理整頓をする
- 清掃修業をする
- 席順を守る
正座している人へ礼の仕方
相手と同じ目の高さで話すようにする
日本の正座は日本独特のものであり、人間らしい品格ある坐法として伝えられている。生理的にみても、他のどの坐り方よりも、腰に負担のかからない座り方として、心理的な面から考えても、沈思思考など坐禅に近い精神的な効果を生むものとして合理的なものといえる。
黙想の意味付けは指導者が自ら考えないといけない。礼儀作法の一環として取り入られているところが多い。
剣道では正座が普段は取り入れられている。
定印はすべてのものが陰陽の世界観の中でとらえられ、男性は陽で、女性は陰である。右手が陽で、左手が陰である。両者をバランスよく組み合わせることが重要。
半眼
半眼にすると、体の歪みや傾きに気付きやすい
呼吸
剣道は目に見えない相手の打ち気・呼吸・二人の間の空気の圧迫感や目の動き・相手の剣先の意図など、息を詰めて感覚を研ぎ澄ますことが求められる。
坐礼
形をしっかり身に付ける
剣道用具の取り扱い方
剣道は用具が多くて不便だが、他では得ることができない貴重な作法や、物を大切に思う心が、また結ぶという行為で器用さが養われていると考えれば、むしろ用具が多いことを感謝すべきである。
竹刀を持つこと自体が作法修業である。提げ刀、帯刀、抜刀、納刀、帯刀、構えを解くなどのすべての所作が剣道である。
竹刀を大切にする
- 竹刀を大切にすることは、相手を大切にすることにつながる。
- 竹刀の携帯の仕方
- 屋外では、提げ刀と肩にかける方法がある。
- 道場では、提げ刀を行う
- 竹刀の操法
- 提げ刀の方法
- 帯刀の方法
- 帯刀と提げ刀の気分の違いを学ぶ
正坐をするとき
- 竹刀の剣先の向きや動作の妨げにならないように正坐をする竹刀を置く位置
- 自分が取りやすい位置、相手に危害を加えない位置に置く
- 刃は自分のほうを向ける。刀でやらないことは竹刀でもやらないようにする。
- 日本の文化の一つの特徴に、最初から直接目的とする行動に移らないというものがあります。
- 茶道でもお茶を出されたからといっても、いきなり口元に持って行かず、挨拶をしたり膝の上に取り上げたり茶碗を廻すなどの作法を間に挟む。
- 竹刀も刀や木刀と同じように扱う
- 日本剣道形でやってはいけないことは、通常の稽古でもやってはいけない。
剣道具について
身代わりとなって我が身を守ってくれる道具を、使う側ももう少しいとおしむ気持ちが必要である。
取り扱い
物は静かにおいて傷をつけないようにする。
立合の礼法・作法
立ち合い
- 相手と気を合わせる
- 最初に動作を合わせる
- 剣道形において一番大切なことは、作法に限らず、すべての動作をお互いが良く合わせることである。打太刀・仕太刀がそれぞれの立場で、自分勝手な行動を慎み相手の動きを見てお互いが協力しないといけない。
- 稽古の時も、形と同様に立ち合い時は相手に良く合わせる。
- 立礼は提げ刀で行う
- 立合の三歩前進・五歩後退は、人間の歩く習性から言っても全く合理的である。
- 蹲踞は剣道の様々な作法や所作にも、格調高い品性豊かな人づくりに一役買わないといけない。
稽古中の礼儀と作法
- まずは目上の人を尊重する
- 初めの稽古を願う時
- 相手に「お願いします」と頭を下げる
- 相手よりも早く面をつける
- 人を待たせない
- 初心者や弟子が指導者にお願いする場合
- 自分からどんどんかかっていく
- 稽古が終わったら一休みをする
- 上位者に対し3本勝負を挑まない
- 元立を空けない
- 稽古中は面を脱がない
- 同輩などとの稽古の場合
- 上座・下座どちらにたつか
- 稽古は願ったほうが止める挨拶をする
- 負けたほうは潔く引く
- 稽古に没頭する
- 発声は、常に気を充実させて正しい発声の伴った稽古をする
- 打突はお互いに認め合う
- 試合で、打突有効のアピールをしない
- 独りよがりの稽古にならないように注意する
- 体当たり
- 体当たりは正しく
- 面がねをぶつけない
- つばぜり合い中に、相手の胸などに剣先をつけない
- 上段をとるときには一言、失礼しますという。
- ガッツポーズをしない
- 相手に常に配慮する
- 上位者に全力でぶつかった後は、短時間の休憩をいれる
見学者と審判員の礼法・作法
- 気分を充実させて稽古をする
- 姿勢を正して稽古をする
- 見学者同士が談笑をしないようにする
- 稽古・試合中のものに、不必要な声をかけたり、声援を送るなどしないこと。
- 道場は禁煙が常識
- 道場内の整理整頓・危険防止は出来る範囲で協力する
- 見学するときのポイント
- 姿勢をみる
- 見学の心得
- 剣道大会での席取り合戦は、周囲に配慮する
- 審判員の礼儀作法
- 審判規則を十分学んでおく
- 主審副審
- 有効打突は対等
- 主審
- 合議の時は。副審を呼びかける
- 他の審査員の正当な移動を邪魔しない
- 副審
- 副審は催促。指示することはないようにする
- 副審は、他の審判の動きに配慮する
- 副審は先輩の副審をたてる
- 審判員は審判員として自覚する
- 審判員は、出場している選手とは距離をおくこと
稽古後の礼法・作法
- 常に相手と動きを合わせる
- 稽古後に気を配るようにする
- 稽古後は終わってから全員で面をはずす
- 稽古をつけてもらった先生には、感謝の心をわすれないで、面を外すのを手伝うようにする。
- 剣道具は正坐して取り扱う
- 稽古後に終礼をきちんと行う
広い視野に立つ
- 祈り、恥じ、恐怖心、恩義、感謝をどう育てるかを考える。人間が追い求めるものには、経済発展以外にもある
- 着装にしっかり取り組み、立派に身に付けようとする心構えが大事
- 使う道具を大切に扱う
- 稽古前後の帯刀・提刀・抜刀・納刀などの一定の動きを遵守する。
剣道は文化
- 剣道着の襟の重ね方、袖の通し方や小手の着装のしかた、剣道具やその飾り、日本剣道形による打太刀・仕太刀の立ち位置、その勝負に至るまで陰陽・五行の学問を取り入れあるいは日本伝統の文化として同化し、今なお残している。陰陽五行説に由来する攻防や構えをとる
- 国家や国旗を大切にする
- 廉恥心や正々堂々を大切にする
- 現代剣道を見直して社会に貢献できる思いやりのある礼儀正しい日本人の育成に務めなくてはいけない。
総括
本書は、剣道でのいろいろなシチュエーションで必要な礼儀作法やマナーを身に付ける方法を解説しています。
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