火の呼吸はヨガで用いられる腹式呼吸法の一つで、一分間に百五十~二百回というすさまじい速さで行われ、身体能力を高める上で数多くの効果が認められています。
特に呼吸器や横隔膜などのインナーマッスルを鍛えるために行われます。火の呼吸によって体幹部が鍛えられて武術に不可欠な体軸バランスの感覚が明確になります。
火の呼吸は身体(内筋、内分泌系、神経系)や脳の能力アップに直結するトレーニングです。
火の呼吸の方法
火の呼吸の基本
火の呼吸は、一分間に約二百回の速さで腹式呼吸を行います。呼吸はすべて鼻を用いて、最初は一分間に三十分から始めて、徐々に速くしていきます。最初はあぐらをかいて座って行います。一呼吸に十秒から十五秒かけての腹式呼吸ロング・ディープ・ブレスを行い、火の呼吸に入ります。
全身をリラックスさせて、息を吸う時に力を入れないようにします。聞こえるのはほとんど鼻から息を短く吐く音で、吸うほうは、その反動で自然に行われているような印象をうけます。五分間できたら、きちんとできていると考えられます。
ムルバンドゥ
ムルバンドゥは息を吸いながら腹部を膨らませ、吐く息に合わせて肛門、性器、臍の三箇所の締めあげを行うものである。最も意識しやすいのは肛門の締めあげである。吐き切ったら三秒間この状態を維持する。これも呼吸はすべて鼻で行う。
実践上の注意
- 健康状態が良好な時に行う
- 食前に行う。食後ならば最低三~四時間は時間を置く。飲酒後には厳禁。
- 換気の良い部屋か屋外で行う。
- 女性の場合、生理中、妊娠中、出産後半年はさける。
- 実践後、最低十五分は入浴を避ける
- 手術経験がある時はあらかじめ指導者に告げる。傷口の治療の状況によっては避ける。
- セットメニューは順番に行い、一部を行うのではなく、全てを行う。
火の呼吸基本エクスサイズ
エクスサイス1
- 仰向きに寝て、両足を揃えて床から十五cmほど浮かせる。同時に頭を起こし、視線を足の指先に向け、両腕は脚と平行にして伸ばす。
- ゆっくりと三十秒間腹式呼吸
- 火の呼吸を三十秒間
- 終わりにムルバンドゥ一回。仰向けに寝てリラックス一分
エクスサイズ2
- 尻を床につけて足を伸ばし、両手の親指、人差指、中指の指三本を床に付けて身体を安定させつつ両足を伸ばしたまま床から上げ、床と三十度から四十五度の角度を保つ。この時両肘は伸ばし、背筋もできるだけ伸ばす。
- この姿勢で三十秒間腹式呼吸。
- 火の呼吸を三十秒間
- 終わりにムルバンドゥ一回。仰向けに寝てリラックス一分。
エクスサイズ3
- 尻を床に付けて足を伸ばし、両足を伸ばしたまま床から上げ、床と三十度から四十五度の角度を保つ。両腕は脚と平行に真っすぐ伸ばす。
- この姿勢で三十秒間腹式呼吸
- 火の呼吸を三十秒間
- 終わりにムルバンドウ一回。仰向けに寝てリラックス一分
エクスサイズ4
- 膝を床に付けて立ち、両掌で両かかとを持つ
- 反る姿勢になるが、顔と視線は天井に向ける
- この姿勢で火の呼吸を一分間
- 最後にムルバンドゥを三回
- 終わったら腰を下ろしながら上半身を戻し、仰向けに寝てリラックス一分。
エクササイズ5
仰向けに寝た状態から、身体を曲げて、両足を伸ばしたまま頭上の床につける。両足は揃え、膝を曲げないこと。
この姿勢で火の呼吸を一分間。
最後にムルバンドゥを三回
終わったら膝を曲げてから足を戻し、仰向けに寝てリラックス一分。
火の呼吸を中心とするヨガのエクスサイズは、脳と肉体とのより密なる有機的な結合の元に人体における基本的なハードやOSをバージョンアップさせるものである。メディテーションなどを有効に活用することで、脳の潜在能力を開花させ、特に、視覚以外の四感を研ぎ澄ます。通常の神経系や内分必系といった人体の命令系統の状態が情報伝達が遅い通常電話回線であるとするなら、ヨガによって光ファイバーに変え、ブロードバンド化すること、一瞬で全身がつながり反応することが達人の道である。
ブレインウォーク
ブレインウォークは「体幹の充実と体軸バランス」の鍛錬であるとともに「絶対平衡感覚の体得」の鍛錬にもなる。
ブレインウォークのやり方
- 身体をリラックスさせ、腹式呼吸で息を吸いながら両手を鳩尾まで上げる。
- 眼を閉じて呼吸を調える
- そのまま火の呼吸をしながらゆっくり前に歩く。四歩前進したら、同じ要領で後退する。一歩につき十五秒くらいかえるとよい。
ヨガ式站椿
站椿(立禅)と火の呼吸を組み合わせる
站椿に一分間に二百回という激しい腹式呼吸である火の呼吸を繰り返すことを取り入れる。
站椿の前に、火の呼吸のセットを修練して、丹田部分に熱の塊を作り、それを骨髄を通して全身に巡らせながら站椿を行う。長年站椿をしている人にとっては、感覚が得られる時間が大幅に縮まる。
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