稽古での心理的な負荷を下げる
私が少年時代の剣道の稽古を思い起こしてみて、剣道の人口を増やすためには、稽古が辛くてついていけないという気持ちを少しでも緩和することが必要だと感じます。
子供が無理なく着実に力を付けられるような工夫が必要だと思います。剣道の稽古は先生の剣道観によって、稽古の雰囲気が2つのタイプに分かれているように感じます。1つ目は、子供をとことん追い込んで、子供の内に秘めた力を引き出すという考え方で、荒修業的であり、私はこれをハードタイプと名付けます。
私の小学校の先生は間違いなくこのタイプの指導者で、稽古はしんどいのが当たり前という空気がありました。それを乗り越える事で人はたくましくなれるという思想が根強くありました。
先生が稽古場にくると、環境は緊張感につつまれました。稽古中は、少しでも集中力が欠けていたり、先生の指示どうりになっていないときは、直ぐにカミナリが落とされました。
先生の掛稽古は、1人あたり10分以上かかることが多くて、少しでも気が抜けていると体当たりで突き飛ばされたり、竹刀をすくわれたり足のさばきが遅いと竹刀で足と叩かれたりしました。
先生の稽古は厳しいものでしたが、それを毎日こなしていた教え子は地力があり大会でも好成績を収めました。しかしこれの問題点は、稽古がきついという理由で剣道を辞めてしまうという人が少なからず出てしまうということです。
もう一つの問題としては、自分で剣道が好きになって主体的に取り組みたいという気持ちが減ってしまうということが挙げられます。
私が他の道場や学校の稽古に参加したり、ネットや本の情報を調べたりして感じたのは、そこまで追い込むような稽古をしていなくても好成績を収めていたり、活躍していたり評判がいい団体があるということです。
そういう環境は、子供に無理を強いる事はあまりなくて、考え方が合理的で、効率良く力をつけるように工夫をしています。子供が自分で道場に足を運んで自分で主体的に稽古できるような空気があります。私はこういう環境をソフトタイプと名付けます。
私が最近の情勢を見て感じるのは、今どきの子どもたちが指導を受ける時は、ハードタイプの指導ではついていくのが厳しいという事です。最近の子供は特に入門するころは、体力や筋力が十分ついていなくて、いきなり厳しく教え込もうとすると挫折しやすくなると考えられます。
指導者としては、稽古での体感的なきつさというものに敏感になる必要があると思います。子供達は、体力が不十分だったり体の使い方が下手な時は、思う以上にきつく感じやすいと思われます。
掛稽古の時間や方式なども工夫が必要だと思います。例えば先生との掛稽古が一週間に30分の掛稽古が一回ある場合と、毎日5分間ある場合を考えてみます。子供の立場から見て、心理的にきつく感じるのは1週間に1回30分の掛稽古がある場合です。
あまりにも時間が長くて厳しい内容の場合、道場に足を運ぶのが気が重くなってしまいます。一方で毎日5分間の場合は、一回慣れてしまえば最初にしっかり気合を入れて臨めば、こなせる内容です。
長期的にみて、どちらの稽古が効率良く力を伸ばせるかというと私は後者だと思います。子供同士の掛稽古でも、わざと人数を奇数にして交代して回るときに休憩がくるようにしたり、4人一組や5人一組にして負荷を緩和しながら行う工夫が必要だと思います。
私は一回の稽古がきついかどうかよりも、子供が主体的に毎日稽古を継続することのほうが大事だと思うし実力が付くと思います。
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