掲載期間: 1994年19号 – 1999年43号
発行媒体: 週刊少年ジャンプ
作者: 和月伸宏
本作品の内容
明治時代初期の日本を舞台としていて、ストーリー自体はオリジナルですが、赤報隊や新選組、明治11年(1878年)5月14日に起きた大久保利通暗殺事件(紀尾井坂の変)など、史実や実在人物を絡ませています。

主人公の緋村剣心は幕末に「人斬り抜刀斎」として恐れられた伝説の剣客です。剣心は明治維新後は「不殺」を誓い、流浪人として全国を旅していました。神谷薫との出会いや、同じ激動の時代を生き抜いた宿敵達との戦いを通じて、贖罪の答えと新たな時代での生き方を模索していきます。
本作品は3編に分かれています。東京編は物語の序盤で、剣心が薫や弥彦や左之助と出会います。京都編は政府に恨みを持つ、志々雄真実一派の武力による明治転覆を阻止する物語です。人誅編は剣心が人斬り抜刀斎として剣を揮っていた幕末時代に、姉・雪代巴を殺された雪代縁を中心に、抜刀斎への復讐を目的に集まった六人の同志たちとの私闘を描いた物語です。
主要登場人物
緋村剣心

短身痩躯で赤髪の優男で、左の頬に十字の傷があります。見た目の雰囲気は明るくて間が抜けているように見える人物で、かつては長州派の維新志士で、伝説の人斬り・緋村抜刀斎といわれていました。当時は殺人剣で数多くの佐幕派の要人を殺害してきましたが、ある事件をきっかけに人を殺すのをためらうようになり、明治維新後は不殺を誓って、流浪人をして全国を旅しています。
神谷薫などの新しいパートナーや仲間達との出会いが有って、その後は宿敵と戦った後、賠罪の答えと新たな時代の生き方を模索していきます。普段は戦わないようにしていますが、戦う場面になったときには、古流剣術の飛天御剣流を使って、逆刃刀を駆使して神業を発揮して大勢の相手をなぎ倒していきます。
普段は温厚ですが戦いの時には、人が変ったように冷酷な表情になり、好戦的になることがあります。年齢は29歳ですが見た目はとても若く見えます。
左頬の十字の傷は一つ目は暗殺を謀った時に相手に付けられた傷で、もう一つは許嫁であった雪代巴を誤って斬殺したときに、巴からつけられた傷です。
神谷薫

神谷活心流道場師範代で、その美しい容姿と剣の腕から東京では「剣術小町」と呼ばれています。活発で正義感の強い性格ですが、それゆえに激昂しやすい面もあります。
命をかけた修羅場を経験し、剣術の腕前も確かでありますが、繕い物を除く家事は苦手です。特に料理は本人としては得意を自称していますが、周りからの評判はあまりよくありません。
また酒癖が非常に悪く酔うと剣心らも手が付けられないほど凶暴になります。剣心が「闘いの人生を完遂する」と決意した姿を目にして、彼のことをずっと側で支えていたいと思うようになります。最終的には剣心と結婚し、息子(剣路)を儲けています。
明神弥彦

東京府士族の少年で小柄な体格をしています。明治維新の混乱によって孤児になりました。両親とも幼いころに亡くなっています。ヤクザに雇われてスリとして働いていましたが剣心と出会ってからヤクザとは縁を切りました。
神谷活心流を学び剣心たちとともに戦うたび、幼いながらも常人離れした精神力・身体能力、剣才を発揮し成長していきます。剣心の計らいで神谷道場に入門させられます。当初は薫と言い争いが絶えなかったものの、段々真面目に稽古に取り組むようになります。
プライドが高く一本気な性格で、子供扱いされることを嫌います。敵味方を始め年長者に対しても物怖じしない発言をします。そのため周囲からは生意気と取られています。早く一人前の男になりたいと強く願い、そのためには血の滲むような努力も厭わず、自分より力量が上の相手に対しても弱者を守るために立ち向かっていく勇気を持っています。
斎藤と直接交渉を行ったこともあり、彼の度胸や胆力は周囲から評価されています。スリのセンスはあり、それが味方の危機を救うこともあります。建物の軒下に長時間隠れるといった器用な一面もあります。後に成長して神谷活心流の師範になり剣心からは逆刃刀と彼の信念「不殺」を、左之助からは彼の生き様「悪一文字」をそれぞれ受け継ぎます。
相楽左之助

怪力と打たれ強さを併せ持つ強靭な肉体が自慢で、徒手空拳や巨大な刀剣「斬馬刀」で戦う東京一の喧嘩屋です。幕末時代は赤報隊の一員として活動し、自分達の保身から逆族の汚名を着せた明治政府に与していた緋村剣心(人斬り抜刀斎)に戦いを挑むが敗北します。以降は剣心の人柄に惚れ込み頼れる仲間として物語に深くかかわっていきます。
長身で細身の体格で逆毛だった髪型をしており、「トリ頭」と呼ばれることも多いが、本人は誇りに思っています。服の背中に「惡」という文字を入れています。(作中では「悪一文字」と呼ばれる)。
性格は直情的な熱血漢で気風のいい兄貴肌の人物で、その性格を慕う舎弟も数多く存在します。一本気で馬鹿にされやすいですが、人の行動を洞察したりする冷静さを併せ持っています。喧嘩相手と戦う前からよく相手を調べたり、賢い面もあります。
斎藤一

新撰組でも屈指の剣腕の持ち主で、幕末時代からの剣心の宿敵です。世を蝕む悪を即座に絶つ「悪・即・斬(あく・そく・ざん)」の正義を自身の信念としています。
幕末の動乱・戊辰戦争・西南戦争を戦い抜き、明治時代における新撰組の数少ない生き残りとなります。維新後は「藤田五郎」と名を改め、警視庁に奉職します。そこでは政府の密偵として暗躍します。
鋭い眼光に触角に似た数本の前髪を持つ長身の男で、痩せた狼のような風貌をしています。性格は非常に冷徹かつ無愛想です。誰に対しても突き放した態度を取りますが、ぶっきらぼうながら気遣いを見せる時もあります。
相手の本質を見抜く観察力・洞察力に優れています。舶来の紙巻き煙草を吸うヘビースモーカーです。好物はかけそばです。他人にあだ名を付けるくせがあります。妻に時尾がいます。
高荷恵

会津出身の美人女医です。西洋医学を学んでいて家柄も名医であります。会津戦争で父を無くして家族も行方不明です。悪徳実業家に眼を付けられて、監禁されて阿片を作らされる羽目になります。剣心と出会って命を助けられた後は、戦いで傷付いた人々の治療を行う役目を担います。
気丈な性格で、当初は武田観柳から逃げるために剣心に近づいて利用し、劣勢になったら一人で逃げようとまでしていたがどこまでも自分を貫く彼に心惹かれ本当に恋心を抱くようになります。剣心に度々アプローチをしていますが薫との関係を知った後に身を引きました。
料理は上手です。そのことを弥彦に気に入れられて、神谷家に住み着くことを受け入れられるようになりました。人をからかうのが心底好きな性格です。また、左之助に対しても好意をもっています。
緋村剣路
剣心・薫夫妻の息子。最終回には幼児姿で登場します。容姿は父親似で、母ちゃんっ子・父親嫌いです。
東京府出身。身長80cm、体重11kg。獅子座、血液型B。特技:木登り。後に明神心弥と逆刃刀の継承を巡って争う運命にあります。性格はひねくれていて自己中心的です。
恐ろしいほどの剣才の持ち主で、話を聞いただけで飛天御剣流の剣技をいくつか再現できます。髪の色は父親と同じ赤毛→焦げ茶色に変わります。飛天御剣流のいくつかの技と神谷活心流を扱えます。剣の才覚はあるが、精神的に未熟なところがあり、弥彦に勝てないでいます。
緋村巴(ひむら ともえ)
身長161cm。体重44kg。1846年(弘化3年)9月生まれ。東京府出身。天秤座、血液型AB。特技:家事(特に料理)。剣心が「人斬り」をしていた時の妻です。旧姓雪代。髪油(白梅香)を愛用しています。
許婚である清里明良を殺害した抜刀斎に復讐するため、幕府方の間者として抜刀斎に接近します。しかし、抜刀斎と共に暮らす中で彼への愛情を感じ始め、愛と憎しみの間で苦悩します。
その後、抜刀斎とお互いの過去を打ち明けたことで心を開き、復讐心を捨て、彼を守りたいと願います。
1864年(元治元年)年末、闇乃武メンバーに半ば騙される形で囚われてしまうが、自分を取り返すべく辰巳と闘う抜刀斎を見て、彼の命を守るために身を投げ出し、彼の前に立ちはだかり斬殺されます。
この時、彼女の持っていた短刀が抜刀斎の頬に傷を付けました。その後は、京都の或る寺に埋葬されています。美人な反面、無口かつ無表情で考えが読みにくく、笑うのが苦手です。その一方で子供好きです。毎日日記をつけていました。作中、剣心に対して一度も面と向かって名前を呼ばず、「あなた」と呼んでいました。基本的に女性を尊称で呼ぶ剣心が唯一呼び捨てで呼んでいる女性です。
比古清十郎

十三代目飛天御剣流継承者で緋村剣心の師匠で剣心に飛天御剣流を授けています。人間嫌いな性格で昔から山中で一人暮らしをしており、明治の頃には陶芸家・新津覚之進として生計を立てています。
自信家で陰険でぶっきらぼうな性格です。他人に敬語を使うことはありません。ナルシストではあるが、自分を自慢するだけの能力を持っています。剣の技量は剣心を上回ります。
その上恵まれた体躯と凄まじい筋肉量を誇り、すべての面で剣心を上回る戦闘能力を持つため剣心が普通に対峙していては歯が立ちません。剣心自身、九頭龍閃の打ち合いでもすべて負けたことに驚いており、敗因として体躯であることを告げられていました。本気で勝負したことがほとんどなくて、志々雄真実よりも実力が上といわれています。
剣心の名づけ親でもあり、剣心の優しい性格から名付けています。剣心を何回か助太刀をしにいっています。重い過去を背負う剣心の運命に関して責任を感じています。酒を飲んでいることが多いです。
赤べこ
東京にある牛肉鍋の店。京都にも「白べこ」という名前で別店舗が存在しています。
三条燕(さんじょう つばめ)
牛肉鍋の店「赤べこ」の店員をしている少女です。一人称は「私」。弥彦の良き理解者的存在。おどおどとした少し気弱な性格で、縁があって弥彦や剣心たちと出会います。初期では弥彦を「ちゃん」付けで呼ぶ癖がありました。後に人誅によって生気を失っていた剣心を、鯨波に立ち向かう弥彦を助けて欲しいと必死で呼びかけることで復活させる役目を果たします。身長131cm、体重28kg。1868年2月生まれ。
東京府出身。水瓶座、血液型A。好きな人:優しい人。
素性は元旗本だった士族・長岡家に仕える家臣の娘です。その関係で長岡幹雄に目をつけられ、赤べこから金を奪うための刺客として送り込まれました。逆らえば赤べこの人間全員を殺すと脅され、断ることができなかったが、長岡幹雄は弥彦によって倒され、薫からもいつまでもビクビクおどおどしていてはいけないと告げられ、強い女の子になることを誓いました。後に弥彦と結婚しています。
実在の人物
大久保利通(おおくぼ としみち)
身長178cm、体重65kg。1830年9月26日生まれ。鹿児島県出身。天秤座、血液型O。特技:政略。趣味:囲碁。自慢:ヒゲ。明治政府の内務卿。明治維新の真の完成である日本が国民国家となるには30年の時期が要ると考え、西南戦争後も政治を行っていました。
幕末以来の知己である剣心に志々雄が京都で暗躍していることを伝え、京都へ向かうことを依頼します。剣心からの返事を聞く予定だった明治11年5月14日、紀尾井坂で瀬田宗次郎に暗殺されました。遺体は、その直後に馬車に踏み込んできた島田一郎達が、自分たちの犯行と見せかけるために切り刻まれました。
桂小五郎(かつら こごろう)
長州派維新志士身長174cm、体重64kg。1833年8月11日生まれ。山口県(萩)出身。獅子座、血液型AB。特技:人材抜擢。尊敬する人物:吉田松陰。好きな人物:幾松。人斬り時代の、剣心の上役である長州派維新志士で、維新三傑の一人。奇兵隊に入隊した剣心を見出し、人斬りに任命しました。
本人も坂本竜馬以外には負け知らずの剣の達人だが、剣心を人斬りにした引き換えに、自らは長州派志士の御輿として徹底して血に汚れまいと戒め、それ以来刀を抜くことはなかった。作中では冷静で理知的、剣心たち志士の同士には気さくに接する、悠然たるリーダーという人物として描かれていました。剣心からも大きな信望を寄せられていました。
剣心の運命を大きく変えることを予見しながらも人斬りの仕事を担わせたり、裏切り者を志々雄を使って容赦なく処刑し、巴を失って失意の底にある剣心に京都で新撰組などから志士たちを守る「遊撃剣士」となることを要請するなど、志士の指導者として非情な決断を下す一面もあります。
人斬りを続ける内に精神的に病んでいく剣心のことを誰よりも気にかけ、高杉の予見どおりの結果となり、剣心を人斬りにしたことを悔いました。巴に剣心と夫婦になることを薦めた人物です。
剣術の流派
神谷活心流
薫の父・神谷越路郎が創始した活人剣です。相手を殺すのではなく制することを極意とし、殺傷力のある真剣ではなく木刀や竹刀を用いて戦います。また、刀身を一切利用せず柄で打撃を与える技もあり、奥義も柄を利用したものとなっています。『活人剣』を振るう者は、いかなる敗北も許されないという事を肝に命じなければいけません。神谷活心流の奥義には「刃止め」と「刃渡り」があります。
柄の下段・膝挫(つかのげだん・ひざひしぎ)
柄を利用した膝関節破壊技(刀身が無くても使用可能)。下段の突進から相手の膝に柄による打撃を打ち込み、敵の膝を砕く打撃技。その威力は、打撃を打ち込む木刀の柄自体も粉々に砕け折れるほどです。
飛天御剣流
飛天御剣流は、剣の速さ、身のこなしの速さ、相手の動きの先を読む速さという三つの速さを最大限に生かし、最小の動きで複数の相手を一瞬で仕留めることを極意とし、一対多数の戦いを得意とする実戦本位の殺人剣です。
「飛天」の名が示すとおり、その使い手は天空を飛翔するかのごとき跳躍力を持ち、相手のはるか上空から斬撃を放つこともでき、その体さばきや斬撃の速さは「神速」と称されます。時代の苦難から弱き人々を守ることを流派の理(ことわり)としています。
飛天御剣流は絶大な力を持つため、継承者は他人に利用されないため自由の身を貫いています。しかし剣心はこの掟を理解してなかったので、明治政府に雇われていたことが有り、事件を引き起こして落ち込んでいた時期があります。伝承者は比古清十郎の世襲名を継承することになっていますが、剣心は受け継いでいません。
飛天御剣流を使いこなすためには、恵まれた体躯が必要とされるため、剣心のようにそれらを持ちあわせない者が使用し続けると、徐々に肉体に損傷が蓄積されやがて剣を振るうことができなくなっていきます。
コメント