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スポーツ漫画

ジャンル: スポーツ漫画

作者: 浦沢直樹

出版社: 小学館

掲載誌: ビッグコミックスピリッツ

発表期間: 1993年10月25日 – 1999年3月8日


あらすじ

両親と死別し、幼い弟妹の世話をする高校3年生、海野幸はある日、事業に失敗し蒸発した兄の借金2億5000万円を背負うことになってしまいます。そこで高校に退学届を提出しプロテニスプレイヤーとなることを決意しますが、日本プロテニス界の有力者、鳳財閥会長の鳳唄子にテニス界からの永久追放を通告されてしまいます。

しかし、唄子がかつてのライバル竜ヶ崎花江の娘である蝶子がテニス界のヒロインとして注目されたため、それに対抗する形で幸がテニスプレイヤーとなりました。こうして、幸は兄の借金を返すためにプロテニスをすることになりました

本作品の特徴の紹介

主人公の海野幸はバイタリティがある女性で、運動神経も抜群で容姿も美しく気立ても良い子ですが、周囲の環境にあまり恵まれていない境遇です。彼女の周囲には何かと悪事を働かせたりする人がいたり、家族が頼りなかったり苦労が多い生活を余儀なくされています。

貧乏生活

幸のライバルの竜ケ崎蝶子は愛嬌がある国民的なアイドルですが、中身は腹黒い女性で、国民からちやほやされる一方でなにかと幸を蹴落とそうと謀り事を仕掛けてきます。幸のコーチになる人物やテニス仲間はみんなあくが強かったり一筋縄ではいかないのですがそれでも幸は前向きに状況を切り抜けていきます。

最終的には幸はウインブルドンで優勝して借金を全て返済してハッピーエンドで幕を閉じます。

海野 幸(うみの みゆき)

海野幸

主人公。成明学園中等部時代に全日本ジュニア選手権で優勝します。しかし、兄の手によって両親が死去してしまった事で公立高校に進学し、テニスも諦めさせられます。程なくして兄が莫大な借金を残して失踪します。その借金返済のためにプロテニスプレイヤーになることを決意します。

野性的とも言えるカンの良さと反射神経、驚異的なスタミナと瞬発力を持つ選手です。物語後半からは通常より速いテンポのライジングショットを武器に戦うが、それがきっかけで左足に故障を負うことになります。すさまじい集中力を持ち、かなりの劣勢から逆転して勝利することもあります。

ただし、本人の頭からは「ボールを打つ」こと以外は消えているため、プレー中以外は集中力が切れて、おかしな行動をとることがあります。

人間としてまっすぐ正直であるため周囲の人々からは慕われているが、ラケットを投げ飛ばしてしまったり(強打を受けて手が痺れていた)、審判のミスジャッジに抗議したり(実際にミスだった)、選手との握手を拒否したり(ジャッジミスで負けを宣告されたため)、人気選手のドレスをジュースで汚してしまったり(完全に事故)、試合後のインタビューに応じなかったりしたことなどから(空港に急ぐ必要があった)、結果として世間からはヒールと認知されてしまっています。

幸への嫌がらせ

中学時代から圭一郎に想いを寄せています。蝶子から様々な嫌がらせを受けていますが、幸は蝶子が裏でいろいろ仕掛けていることに気付いていなくて、彼女は親切な友人だと思っています。

海野 家康(うみの いえやす)

長男。マツタケとトリュフの養殖事業に失敗し、2億5千万円の借金を背負い失踪しました。楽観的で騙されやすい人です。両親を他界させた張本人(幸の全日本ジュニア選手権優勝を祝うために調理したフグ料理によるもの)です。幸は「全て家族を想ってやったこと」と常に家康の身を案じています。

海野 洋平太(うみの ようへいた)

幸の父。物故者。コーチングをするのも恐れ多かった現役時代の鳳唄子に向かって、平然と欠点を指摘した人物です。当時の日本男子選手では唯一グランドスラムを狙えると言われていました。

その鷹揚でまっすぐな性格から唄子に想いを寄せられていたが、唄子に対してフィアンセとして福子を紹介する形で知らないうちに唄子を振ってしまい、その仕返しでテニス界を追放されてしまいました。

試合前、試合中に奇行が目立つ選手であったらしく、その部分は幸に受け継がれています。死因は幸の全日本ジュニア選手権優勝を祝うために家康が調理したフグ料理があたったためです。

鳳 圭一郎(おおとり けいいちろう)

鳳財閥の御曹司。大学テニス界ではかなりのプレーヤーで日本テニス界のプリンスと将来を嘱望されプロ転向をマスコミから期待されています。幼少の頃から母・唄子に過保護に育てられており、すべて母が決めた通りの人生を送ってきました。そのことを恥じつつもマザコン気質からは抜け出せず、大学生になっても母親を「おかあしゃま」と呼び頭が上がりません。

幸とは同じ中学に通っており、裕福な家庭の生徒ばかりのテニス部内で馴染めずにいた幸に気を掛けていました。外見は軽い感じで女性とも交際が多そうに見えますが、中身は一途な性格で幸を好きになってからはいつも彼女を気にかけています。他の女性との交際経験はありません。純二と幸の関係をいつも気にしています。

最初は頼りないお坊ちゃまだったのですが幸の力になろうと奮闘する過程で次第にたくましくなり、ついには母の意向を振り切り、プロ転向を果たします。

USオープン転戦のため渡米した幸を追って自身も渡米した際、世界的な名コーチのフリッツ・シューマインにプロでやっていくのは無理だと言われ、一時はテニスを断念しますが、その後コンビニの店員やホスト、蝶子のコーチ等を経て、会社の金を横領したことで「ビッグバンファイナンス」の同僚たちに痛めつけられた純二を救い出した際に右手にラケットも握れないほどの負傷を負いますが、由利組に人質に取られた幸の兄妹たちやナタリーを救い出した際に再び右手が使えるようになり、その後はプロとして復帰しました。

鳳 唄子(おおとり うたこ)

鳳財閥の会長で、日本女子テニス界の先駆け。昭和43年に全日本選手権を制覇します。所属していたテニスクラブの新任コーチ、海野洋平太に最初で最後の恋をするが、儚くも恋破れました。それ以来、海野家を毛嫌いするようになり、海野家をテニス界から追放しました。

しかし世間ではライバルと評されている竜ヶ崎家の名声向上を嫌い、竜ヶ崎蝶子のデビュー戦に海野幸をぶつけるために出場させることを決めます。その後は幸をサポートすることを決めたが、完全に許したわけではなく、「悪霊」「疫病神」などと呼んで冷たく突き放したり、酷い仕打ちを与えることもあります。洋平太の事もあり幸を憎んでいたはずだが、幸に課した特訓等はすべて幸のためであり、亡き洋平太への贖罪であったという事になっています。

賀来 菊子(かく きくこ)

鳳テニスクラブ会員。通称「お菊さん」。国体優勝候補といわれています。男子顔負けのプレースタイルや性格から女性ファンも多いです。幸の良き理解者であり、心強い味方です。初めて試合をしたときから幸のことを気にかけているが、実はレズビアンと噂されています。

幸は色々なテニス仲間から嫌がらせを受けているのですが、それのほとんどの原因が蝶子からきていることを彼女は知ってしまいます。一度大会で彼女への暴行事件を起こして処分を受けて復帰してから、のちに宿命のライバルと並び称されるようになります。

竜ヶ崎 蝶子(りゅうがさき ちょうこ)

竜ケ崎蝶子

竜ヶ崎花江の娘。全日本ジュニア選手権を制し、ルックス、実力を兼ね備えたテニス界のアイドル的存在です。表面上は可愛らしい女の子を装っているが、悪魔の如き汚い本性を持つ相当の策略家で、鳳圭一郎を自分のモノにするべくあの手この手を使い幸を貶めようとします。

その策略振りは最早、犯罪者レベルとして悪質極まりなく、テニスにおけるライバルたちを潰すためにも遺憾無く発揮されています。勝負に勝つためには手段を選びません。

圭一郎の事を想った時等、険のない穏やかな表情を見せます。最初の頃は圭一郎への想いはルックスがいい御曹司への軽いものでしたが、圭一郎がたくましくなるにつれて本気で好きになっていきます。

これが彼女にとっての本当の意味での初恋であり、同時に圭一郎が想う幸への嫉妬と憎しみも大きくなっていきます。

終盤のウィンブルドン準決勝戦の直前で圭一郎に振られたことで本性を露にし幸を追い詰めるが、彼女の驚異的な粘りの前に遂に敗北します。

試合後の会見では愛想を振りまかずに、素の邪な内面を出してしまったので、国民には彼女はおかしくなってしまったと思われました。

帰国後、幸へのリベンジのため猛特訓をする中、圧倒的実力を持つ女王ニコリッチに対し、左膝の故障を抱えながらも必死に食い下がり、追い上げる幸の試合を見て作り物ではない本物の涙と笑顔を見せます。

サンダー牛山(サンダーうしやま)

アメリカロサンゼルス出身の日系人。鳳唄子の依頼を受けて幸のコーチとなります。見るからに怪しいオヤジであるが、その指導力は一流です。さらにスポーツトレーナーとしても優秀であり、触っただけでその選手の身体の状態がわかります。

1970年に来日し数々の優秀なテニスプレイヤーを育てますが、スケベでちゃらんぽらんな性格が災いして1980年に教え子にわいせつ行為を働き、八百長をさせたという噂が出て、テニス界から永久追放になっています。

コーチ自身が何から何まで細かく管理することはありません。確実に勝負師として勝てる技術と精神を身に着けさせる手法を好みます。あれこれ指示をだすわけではありませんが、教え子が成長する為の状況を容赦なく作り出します。

教え子の技術と肉体と精神の状態を把握して最良条件を維持して成長させることを懸命に努力します。また、政治にも長けていて策士でもあり、因縁のあるアラン・キャリントンを挑発して海野幸をUSオープンに推薦させることに成功しています。

ウィンブルドンのシード権を得るために故障を抱えた海野幸に必要最低限の試合数を選定しています、またインタビュー料100万円を請求することでマスコミを完全に遮断して海野幸をテニスに集中させている、など教え子をとことん大切にする優秀なコーチです。

しかし中身はとても優秀なコーチにもかかわらず、普段の周囲への態度があまりにも下品で印象が悪いので優れている部分を知っている人は唄子以外にはいません。

過去に才能がある女子選手のコーチを受け持ったことがありますが、その子が入水自殺を図ったり、救出に成功するもセクハラで訴えられたりするなどの不祥事を起こして、1度テニス界を追放されています。

その後は酒や女におぼれて堕落した生活を送りますが、幸には最初は八百長で賞金を稼ぐ関係を結ぼうとしますが、幸はあくまでも勝ちにこだわって拒否したので、サンダーも感化されてきちんとしたコーチとして活動を再開します。

サブリナ・ニコリッチ

東欧出身の世界的プレイヤー。14歳でプロデビューしてからはメキメキと実力を上げて行き、18歳で世界女王へと登り詰めます。他の女子選手とは比較にならないほど圧倒的な強さを誇り、自身が汗をかく前に試合を決めてしまうほどです。誰と戦っても圧勝してしまうため、ドローが発表されても自分の対戦相手が誰か全く気に掛けないどころか、顔も名前も眼中に入りません。

その別次元の強さゆえ、テニスに対する情熱を失いかけています。元は貧しい家の生まれであったが、プロでの成功により急激に収入が増えた結果、テニスコートの整備士であった父が脱税、兄は麻薬でそれぞれ捕まり家庭が崩壊します。

コーチをつけないで一人で活動しています。ニコリッチの賞金総額が2億5千万円で幸の借金と同じ金額だったことが、幸がプロテニスプレーヤーになる決心をするきっかけになっています。

巨万の富を得てからも質素な生活を送っており、幸が買おうとしていたバーゲン品のカーディガンを横取りし、自分が先に掴んだと主張する幸に因縁を残して去っていきます。最初は柔らかい表情を見せていましたが、段々涼しい固い表情にかわってきています。

ウェンディ・パーマー

人気、実力上昇中のアメリカテニス界のアイドルです。アメリカ遠征中の幸と対戦します。当初は幸のことを見下していましたが、自分が負けた時に一緒に幸が泣いてくれたのがきっかけで2人は仲良くなります。

ウェンディと幸

その際に幸にもらった酢こんぶがお気に入りです。男子選手に恋をしてしまい、練習に身が入らなっている所を蝶子に付け込まれてしまいます。

アラン・キャリントン

ウェンディのコーチであり、全米テニス協会の次期会長候補です。世間では爽やかな紳士的な人物で通っているが、本性はかなり陰険で、サンダー牛山とは対抗意識を燃やす因縁の関係です。

小学校のころから2人は関わっていてサンダーがわるふざけをしたことで学芸会でうんこを漏らしたことが有ります。そのことをネタにサンダーからからかわれることがあります。サンダーの策略によって幸を全米オープンに出場させるべく利用されました。

桜田 純二(さくらだ じゅんじ)

高利貸し「ビッグバンファイナンス」営業主任です。海野家康の残した借金返済のために家康の妹である幸にソープランドで働くことを強要します。高校時代にJリーガーを夢見て全国大会出場を目指しますが、地方予選決勝で自らの自殺点によって敗退し、周囲から見限られたと思い自ら夢を断つ羽目になります。

借金の取り立てで幸と偶然会い幸の姿が自分の過去とかぶるので気にかけていきます。周囲からは仲睦ましくみられています。しかし、幸と圭一郎が相思相愛な事も知っているので、微妙に距離を置いています。幸の借金返済のために会社の金を横領して、失踪していた家康を見つけて逃したりして最後は会社を裏切ってしまいます。

その後由利組に人質にとられた幸の兄妹たちやナタリーを救い出した際、同行していたフィリピーナのルビーとともに、由利組の構成員に由利組の別荘近くの崖まで追い詰められ崖下の海に飛び込みます。その後は生き延びてルビーの家族とともにフィリピンで暮らしている写真が幸のもとに送られました。

鰐淵 京平(わにぶち きょうへい)

高利貸し「ビッグバンファイナンス」社長です。「クロコダイルエージェンシー」という代理店の社長も兼任しています。金に対する執着と汚さは家康を遥かに凌ぎ、海野幸と代理契約を結び、莫大な利益を得ることを目論みます。幸に普通の女性にはない「輝き」を感じ、異常とも思えるほど固執していきます。

自分は特別な人間であると思っており、他者を完全に見下し、部下に対しても一切の情をかけることが無く、目的のためなら手段を選びません。幸から「そんな性格は直したほうが良い」助言を受けるも全く理解しようとしませんでした。そんな性格が災いし、取引先から断絶され会社は傾き、部下の社員達にも逃げられてしまいます。

資金繰りの際に金を借りた由利組の構成員に殺されかけるが、幸からブックメイカーの配当金2億5千万を借金の返済という事で託され、結果命を救われました。

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