県立海空高校野球部員山下たろーくん 1

スポーツ漫画

ジャンル: 野球漫画

作者: こせきこうじ

出版社: 集英社

掲載誌: 週刊少年ジャンプ

掲載期間 :1986年44号 – 1990年32号


作品解説

高校野球を題材としたスポーツ漫画である。基本的な描写は試合が中心で、学校の授業風景や登場人物の私生活はおろか、練習風景すらほとんど描かれていません。また、ほとんどの登場人物が苗字のみで名前も設定されていません。

試合の描写が長くなりがちな野球漫画の中ではテンポがよい作品です。作品の特徴として、通常の時間軸ではあり得ない会話や問答を試合中に取り入れ、心理状態を表現することが多いです。

ストーリー

史上最高を目指す史上最低の野球部員、山下たろー。彼の所属する海空高校野球部はやる気の無い常に1回戦コールド負けの弱小チームでした。

練習風景

ある日の練習中、同じ地区の強豪・山沼高校が練習試合の帰りに偶然立ち寄ったのを偵察に来たと勘違していました。さらに山沼の選手たちのお世辞を信じ込んだ海空ナインは猛練習を重ね、またたろーの野球への情熱に感化され、怒涛の勢いで勝ち進むのでした。

主要登場人物

県立海空高校(千葉県)

校舎は2階建ての木造であり、中央の大きな時計がシンボルである。男女共学です。千葉県内の学校が扱われています。公式戦では千葉県営球場が使われています。

野球については無名校であるが、バックネット付きのグラウンド、専用部室、テレビ、ビデオといったAV機器を所有するなど、野球部に必要な設備は整っています。

しかし、大会出場に必要な人数がギリギリという薄過ぎる選手層が最大の弱点で、大中央学園戦以降の最終盤では欠場者を二人も出し、控えの選手もいないなど戦力に大きく響いてしまったため、本作最後の試合となる山沼との甲子園決勝戦で不戦敗になりかけました。校名通りユニフォームは青が基調です。

山下たろー

主人公で投手です。「史上最高の野球部員」となることが目標です。ナガシマに憧れ、野球を始めました。何をやってもダメな高校生で周りから苛められていましたが、辰巳との出会いで隠された野球の能力が開花していきます。

山下たろー

1つのことに気をとられると他のことが極端に疎かになります。辰巳曰く「ド不器用」だが、技術の習得や咄嗟のひらめきによる順応性により強敵に対する打開策を見出します。通称「発展途上人間」です。江河原戦では右打席に立ちまたサウスポーでの登板も行うなど、架空の野球選手の中でも稀なスイッチヒッターかつスイッチピッチャーです。

普段は右投左打です。頑強な身体が持ち味だが、故障も厭わず限界以上に身体を酷使したことが続編の伏線となっています。「~(だ)ど」「~(だ)もんね」など、言葉遣いは独特です。1973年2月2日生まれ、身長152cm。

投球・守備

高く足を振りあげるピッチングフォームで、速球を主体とした温和な顔に似合わない勝負度胸のある強気な投球スタイルである。常に真っ向勝負が信条(敬遠を1度のみ決行したことが有ります)です。ハーフスピードの直球をど真ん中に投げます、超スローボールを駆使するなど相手打者の虚をつく大胆さも持ち合わせています。

与四球率自体は特筆すべき成績ではないが、得点圏に走者を置いた際は抜群の制球力を見せるコマンドピッチャーです。スローカーブ、チェンジアップ、フォークボール、サンライズボールなど球種も豊富です。スタミナも凄まじく、関東大会の山沼戦では250球以上を投げて完投しました。

得意球は、全身をムチのようにしならせたフォームから繰り出す打者の手元でボールが伸びる「大速球1号」と、さらに腕の関節の柔らかさを加えた「大速球2号」があります。

選抜高校野球大会で吉田や辰巳が投手の際には捕手を務めたが、捕球技術は高くありません。三塁手も務めていたことがあります。

打撃・走塁

4番です。本来は右打ちだったが、一塁に近いからという単純な理由で左打ちに転向しています。最初の2球を空振りして追い込まれることは多いが三振の描写は極端に少なく、ファウルで粘った末に打開策を見つけ、結果を出します。長打率が高く、本塁打数は二桁に達します。江河原戦では右打席で本塁打を放っています。

ここぞという時の走力は攻守両面に活かされています。特に一見無謀な本塁突入や俊足で鳴らす相手へのタッチプレイが勝敗を左右することも多いです。

なお春の甲子園での4本塁打は実際の記録をも上回ります。さらに紀伊國戦及び大中央学園戦で外野の好守に阻まれ本塁打を1本ずつ損しており、大会新記録を逃しています。

辰巳亮介

三塁手。3番 右投右打です。中学時代は投手だったが、当時の監督に指図されたのが気に食わず暴行事件を起こし、たろーと出会うまで野球をやめていました。大柄で血の気の多い粗暴な性格で、何かに付けてたろーを殴って蹴って張り倒します。感情を素直に出さずにクールなところがあります。

辰巳

打撃力・守備力ともに高く、新開に「海空の一番の実力者」、佐々木に「メジャーリーガーに匹敵する」とまで評価されています。春の甲子園準決勝あわもり高校戦では先発投手を務め、驚異的な握力でフォークボールを連投し、咄嗟の思いつきでスプリットフィンガード・ファストボールを投げ込むなど高い野球センスを見せつけました。あわもり戦で途中降板した後は捕手を務めました。

普段は恐ろしい形相であるが、集中力が高まると無表情になります。全国制覇を決めた直後には感動のあまり嬉し泣きをしています試合外の私生活が描写された数少ない人物です。2階建ての一軒家に住んでいます。

須永

二塁手。右投左打。海空が誇るリードオフマンで通称「さすらいの賭博師」です。高校生ながら「競馬・すごろく・麻雀・チンチロリン」など各種ギャンブルにより常に勘を研ぎ澄ましており、勝負師としてのセンスは抜群です。

須永

北野も認める芸術的な打撃と守備を誇ります。辰巳に勝るとも劣らない実力者であり、須永を起点に相手投手を攻略することも多いです。

冷静沈着で孤高の人物という印象を与えがちだが、仲間を思う絆と勝利にかける執念は人一倍です。一方私生活はナインでも知る者はいません。常に帽子を外しません。海空の選手で唯一、泣いた姿が描かれていません。

高倉

一塁手で主将。右投右打です。慢心しているナインを殴って気合いを入れようとした辰巳に自ら平手打ちを頼んで、観客の野次に激高した大内山の頬を叩いて落ち着かせて、辰巳に求められ殴って気合いを入れる、など随所で主将らしいリーダーシップを発揮するようになりました。打順は8番、5番、2番と多彩です。明陵戦では、犠牲フライを放ち、突破口を開きました。

田中

捕手。右投右打。家が農家であり、普段家では農業を手伝っています。鍬を振り下ろすような独特のダウンスイング「農耕打法」が特徴です。素朴な顔に似合わず冷静沈着な性格であり、リードは正攻法を主体としながらも時に大胆なものに切り替え、相手を撹乱します。女房役としてたろーの操縦法を心得ている。

田中

柔らかい野菜を潰さずに当てることができるほどのバントの名手であり、出塁率も高いです。江河原戦の1回裏には、二塁走者の大田原を牽制でアウトにし、そこそこ肩も強いです。ナインの中では脚が遅いのが短所です。最初は2番で固定だったが、のちに補欠となり、外野手としても出場するようになっています。その後練習を積み重ねて足が速くなっています。

熊田猪一郎

左翼手。右投右打です。巨漢で、スイング時にすっぽ抜けたバットが左翼手の守備位置まで届くほどの怪力を誇り、たろー以外でサヨナラホームランを打ったチーム唯一の選手です。強打とチーム一の強肩を持ち合わせています。打順は5番、6番、7番です。一方チーム一気弱で、手強い相手の前では震えていることが多いです。また非常に涙もろいです。県大会初戦の大潮商との試合でスクイズを決めた際に首を負傷しています。常にレギュラーとして試合に出場しています。

大内山

中堅手。右投右打。チーム一短気です。かつてたろーをバカにしていたが、やがて感化され、海空ナインとしての自覚をもつようになります。なぜか山沼の近藤に対しては強く、決勝で4安打を放っています。守備も良いです。

ホームラン性の打球を何度もダイレクトキャッチしています。甲子園では大中央学園戦で足を負傷し、以降の試合は欠場した。あわもり戦では伝令をしています。練習時には打撃投手を担当しており、投手としてのスキルも持っています。

吉行

遊撃手。右投右打。あご髭が特徴です。ど真面目で要領が悪く、たろーに似たタイプの選手です。真ん中高めが得意です。チーム一地味で、打撃成績は高くないが、ジャストミートした時の打球の鋭さはチーム一です。

最初の山沼戦では一番バッターだったが、唯一活躍した南浦戦では7番、以降さらに8番へと下がっていきました。打率が悪いのに7番なのは鋭い打球を期待されていたからなど、面白い設定を持っていました。

若月

右翼手です。右投右打。肥満体型であるが俊足であります。その足を活かし、好守で何度もピンチを救っています。打撃ではここぞという時にセーフティーバントを含め、内野安打を放つことが多いです。打順は9番か8番。甲子園では大中央学園戦での度重なる負傷が災いし、以降の試合は欠場しました。ナインの中で唯一アンダーシャツを着ていません。

新開

補欠・マネージャーです。地区大会前に入部しています。野球の理論や技術論に精通し、ナインが質量揃った練習をすることができたのも彼の知識によるものが大きいです。海空ナインの頭脳的存在で基本的には解説役や助言役に徹しているが、選手層の薄さなどの理由から自らもグラウンドに立っています。

運動音痴で戦力としては他のナインに劣ります。卓越した知識、及び努力と根性でカバーし、フェンスオーバーの打球を2回もはじき返して本塁打を阻止するなど随所で勝利に貢献しています。海空ナインで代打及び代走での出場描写があるのは彼のみであり、かつ代打では打率10割です。

大林監督

野球をよく知らず、甲子園でのインタビューでは質問に答える事が出来ませんでした。ただ時に的を射たアドバイスを送ることもある。なぜか帽子を被った場面は一度もないです。

校長

甲子園の準決勝で裸の上半身に選手達の似顔絵を描いて応援するなど母校愛に溢れ過ぎている人物です。辰巳は呆れ、たろーは感動していました。

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