ジャンル: 格闘、柔道
掲載誌:週刊少年ジャンプ
掲載期間:1990年14号から1991年25号
作者:みのもけんじ
あらすじ
柔道を題材として、少年西田ひかるの成長を描いたストーリー。泥臭い熱血スポ根路線を踏襲していながらも、ひかるや母、三好家が抱く家族愛なども如実に描かれました。
西田ひかるの父・俊介は学生時代は「鬼殺し」と畏怖された跳ね腰が武器の柔道選手として、ミュンヘンオリンピックの日本代表にまで登りつめたことがあったが、怪我により出場を断念する事になります。それでも五輪の夢が諦めきれず、仕事が早く終わった時は母校大学で柔道指導しており、1992年4月中旬、海外出張時に予定のないバルセロナに行き交通事故により39歳で他界します。

そんな父の遺志を継いで、主人公西田ひかるは華荻第三中学校に入学するや、柔道部の門を敲く。そこは父も在籍した名門だったが、それは昔の話で今はすっかり落ちぶれていました。とはいえ、全く柔道経験のないひかるは、先輩やいじめっ子の染矢、同学年の森田らのいびりにもへこたれず、ここで強くなっていくことを誓うのである。
話の流れ
1.ひかるが華荻三中の柔道部に入部する。先輩と練習試合。
2.上等中学校へ練習試合に行く。
3.三好道場の合宿に参加する。
4.地区大会
vs白石学園
vs仙道学園
vs三星中学校
5.都大会
vs天丸中学校
vs黒龍中学校
エピローグ
主要登場人物
華荻第三中学
かつては古豪として知られていたが、現在は力をつけた上等中学や三星中学に人材を奪われ、光を失っていきました。ひかるの台頭や三好の柔道部復帰によって、再び脚光を浴びるようになります。城西地区に属します。ひかるの父親が活躍していたころは名門としてその名を轟かせていました。三好道場の館長の孫である三好日明がこの学校に在籍していますが、当初は柔道部には入部していませんでした。話の流れにより途中から入部することになります。
西田ひかる
本編の主人公。坊主頭で背は低い。入部当初は髪の毛を伸ばしていたが、心機一転の意で坊主頭にしました。気が弱く、苛められっこだが強靱な精神力と忍耐力を持ち、柔道部でも相手に積極的に投げられたりすることで、自身を強く磨いていきました。得意技は「鬼殺し」と呼ばれるはね腰であり、これは父が得意としたもの。しかし体格が小さいひかるには、はね腰が真に向いている技とは言えず、跳越と薪割を応用し、弱冠中学1年で幻の柔道技といわれる「山嵐」まで身に付けてしまいます。

継ぎ接ぎの柔道着がシンボルで、これはひかるの母親が父親の遺品である中学時代の柔道着を縫い直したものです。そのため、川本小鉄に「ボロゾーキン」呼ばわりされた時には激しく怒りを見せていたが、後に逆にそのボロボロになるまで練習に励んだ父のことを偲ばせるアイテムとして、それを身に付けることを誇りに思うようになりました。
森田優治
1年。気は強く、入部当初はひかるを馬鹿にして来たが後に彼の謙虚な姿勢に惹かれ、友情に篤くなりサポート的な立場となります。得意技は釣込腰だが、相手により様々な技を使いこなすバランス型です。三星中学柔道部から「弱肉組」とバカにされたが、地区大会決勝戦で「俺たちはいつまでも弱肉組じゃねー」と執念を燃やしました。先鋒か次鋒として試合に出場しています。
春久光司
1年。長身のプロレスマニアでプロレスばりのバックドロップ(裏投げ)を披露する。あだ名はハルク。体格とセンスで柔道をしているような選手です。
金子直也
1年。腕力に乏しいため、華荻の二軍でも補欠扱いだったが、知識は豊富です。
寺田正雄
1年。肥満体系で素質は悪くありません。内股からの大内刈りの連絡技を披露するも、いい結果を出せませんでした。
染矢薫
2年。性格は悪く、さぼり癖を持っています。入部したばかりのひかるにも目をつけ、目障りな彼を追い出そうとしたが、逆に一蹴されてしまいます。腕力があり、素材は悪くはないが、下半身が弱いためにいつも出足払いによって負けていました。
華荻三中の団体の試合は、先鋒のひかると勢いを引き継いだ次鋒が勝利して試合を優位に進める展開が多いですが、中堅の染谷が簡単に敗れて、勝負が分からなくなるケースが多いです。三好日明を尊敬しており、彼が部に戻ってからは見違えるようになりました。
木村五郎
中学3年。主将で当校唯一の黒帯で、実力者です。初登場当初は締まりのない表情の出で立ちだったが、三好が部に戻ってからは主将としての威厳を持つようになりました。特技は内股。あだ名はラッシャー。
大里貴志
3年で副主将。団体戦では副将を務めます。茶帯。
斉藤和一
3年。レギュラー、団体戦では中堅を務めます。地区大会では足を負傷しながらも準決勝まで戦い抜きました。
三好日明
天才柔道家・三好尊徳の孫でエース。柔道の天才少年と呼ばれ、新聞にも載っていました。柔道始めるにあたり、多数の柔道書籍を買おうとするひかるに受身が重要とアドバイスを送り、書籍も1冊で充分と説明します。母親の死にも関わらず、柔道の試合に出た父に対して反目しています。
彼が柔道を辞めたのは、家族の仲を引き裂いた柔道を恨むようになったからであるが、その父親に暗黙の復讐を果たすため、柔道部復帰を決意します。得意技は浮き落としという空気投げだが、これも三船久蔵という天才柔道家が長年の鍛錬の末に編み出した幻の技といわれているものです。試合では、他校の対戦相手を寄せ付けない圧倒的な強さを誇ります。ジョーカーのような存在の選手です。
早乙女千春
顧問。39歳。西田俊介や三好大蔵とは学生時代からの同期だが独身です。『夕やけニャンニャン』が好きで沢山録画しています。部員に西田俊介の大学時代の柔道ビデオを見せます。西田俊介の強さに部員が驚愕します。部屋を散らかしてしまう癖があります。
上等中学
城東地区の名門です。華荻第三中学とは親交が深く、かつてはライバル同士でした。部員数55名でうち黒帯は16名在籍です。作中では最高ランクの名門の扱いですが、強さを見せつける場面は少なくて、他校の強豪選手の引き立て役に回る事が多いチームです。
川本小鉄
ひかるのライバルの一人として登場したスキンヘッドの少年です。過去の回想では両目を前髪で隠したオカッパ頭だったが後に現在のスキンヘッドに変わりました。口は至って悪く、感情がストレートに出るタイプで、「ボロゾーキン」と言ってひかるを扱き下ろしました。
しかし、ひかるのライバルは後に二枚目キャラの若林に取って代わられてしまい、後に新手の強敵の咬ませ犬にしか扱われなくなりませんでした。それでも名門の先鋒としての安定した実力は持っています。
小学生時代はいじめられっ子だったので三好道場に通い始めた経緯があります。白帯だが真弓とほぼ互角の実力で上級生をもものともせずに負かしており、「レギュラー取り返すなら土下座しかない」とまで言い放つが、三好兄弟前では態度が一変して敬語を使いペコペコしています。
松野敏晴
主将で、常に落ち着いています。特技は体落とし。かなりの実力者で、若林には負けなかったものの、都大会では簡単に黒龍中のカモにされてしまうなど、全く立場がありませんでした。三好道場の勝ち抜き戦では、一番最後に出てくる選手(強食)として扱われています。団体戦では大将をつとめています。
阿部
前年度全国大会で個人戦ベスト4の成績だが、川本に惨敗します。
須貝
顧問。早乙女の後輩。三好道場の門下生でした。
三星中学
城西地区において、近年急速に実力をつけてきた名門校です。先鋒の1年生若林がポイントゲッターになっています。
若林信悟
1年。ひかるのライバルとして登場した二枚目の少年。大里や川本をあっさりと破り、木村・森脇はおろか真弓すらぶん投げています。三好道場の合同合宿で松野に拮抗する実力を見せるが、マドカは勝ち抜き戦でバテてなければ松野を倒せていたと評しています。
三好に練習試合を申し込むが、ひかるに勝ったらと条件つけられました。当初はひかるをバカにしていたが、三好の挑発に乗り対戦するものの、ひかるに場外とはいえ完璧に投げられた事でライバル心を抱くようになります。
得意技は巴投げだが、基本的に巴投げは、上背のある人間では不利です。三好道場合宿終了後は真弓や森脇に跳腰をかけてもらい、足を怪我する程の猛特訓を重ねて跳腰と移り腰を習得します。他の1年部員は合宿については行けるものの弱いです。父は転勤が多く、9月には海外に行くことになります。
真弓洋
主将。3年。地区大会では木村に勝つがひかるにやられてしまいます。左右両方の組手を扱えます。ひかると対戦した際には「若林はこんなに動きの鋭い奴と戦っていたのか」と驚愕しています。
森脇義輝
3年副主将。団体戦は副将。地区大会では大里と対戦し引き分けに持ち込まれてしまいます。
酒井徹
2年。エラが張った素顔が特徴で練習試合でひかるにやられてしまいます。返し技の名手だがひかるに2敗しています。
浅子新八郎
2年。180センチの93キロの染谷以上の巨体です。キツネ目の大型で練習試合で染谷に送り足払いで勝利します。
白石学園
前年の新人戦において華荻と互角の勝負を繰り広げましたが敗北します。華荻三中との初戦では、ポイントゲッターの副将藤尾と大将山崎をそれぞれ次鋒と先鋒に置く変則オーダーで勝負を挑んできます。
山崎隆
主将。得意技は小外掛けで独特の入り方をします。力自慢で、前年度は惜しくも木村に大将戦・代表戦共に敗れてはいるもののほぼ互角の実力を持っており、他校の選手に名が知られています。地区予選一回戦の先鋒戦で、ひかると戦うが小外で仕掛けたのをはね腰で返されて敗れます。ひかるのような小柄な相手との対戦経験が無く、当初は戸惑っていました。
藤尾友男
副主将。次鋒戦で森田と戦うも、出足払いで敗れます。ひかるvs山本戦を観戦した際にひかるにやられたのも納得していました。前年度は副将戦で大里に勝っています。
新間
監督。早乙女の後輩です。1年をレギュラーにした事について戦力ダウンしたと読んでいましたが完敗しました。守りの柔道が得意です。山崎と藤尾には攻撃的柔道を指導していました。
仙道学園
三星に並ぶ強豪校です。
山本博基
1年で先鋒です。ひかるよりも背が低いがかなりの実力者で背負い投げが得意です。側から見ると逃げ回ってるように見えるが、三好と早乙女は体捌きが上手で容易に投げに持って行けないと評し、山崎もムードメーカーでポイントゲッターと評しています。木村は強豪校でレギュラーは実力者の証と言っています。
天丸中学
都大会の準決勝で対戦することになる強豪校です。松沢選手の情報分析力をいかしたID柔道を仕掛けてきます。
松沢常雄
3年主将で先鋒を務めます。パソコンを駆使した情報収集と分析をするいわゆるID柔道でひかるの山嵐を封じるも、逆からの山嵐に敗れます。
黒龍中学
城南地区代表です。都大会では上等中学校と対戦して、先鋒で勝利して勢いをつかんでの5-0のストレート勝ちを成し遂げています。
三好大蔵
特別コーチ。3段。三好尊徳の息子で日明の父です。現役時代は俊介に一度も勝った事がありません。
三沢敬司

大蔵が日明以上の器だと評価しているトンガリ頭の3年。主将で先鋒を務めます。イナズマ落とし(隅落とし)といわれる相手を前方に投げる空気投げを使いこなします。都大会では若林や川本をイナズマ落としで倒し、ひかるとの戦いでも圧倒的な強さを見せつけるが、ひかるの起死回生のはね腰で敗れてしまいます。
橋本鉄雄
大柄で松野を研究し尽くして破る実力者です。
三好道場
三好マドカ
作中のヒロインで、三好日明の妹です。健気な姿勢を続けるひかるに好意を持っています。合宿中は怪我の手当てを担当します。
三好尊徳
70を過ぎてもなお、現役の柔道家を続ける矍鑠たる老人。性格はけっこうひねくれており、ひかるを騙して薪を積んだ大八車を牽かせたり、ひかるたち華荻三中二軍に徹底した苛めを行ったりもしたが、基礎体力の無い彼らに必要な指導でした。俊介や早乙女ら師匠でもあり、俊介を交通事故で失ったことで老け込んでいた部分があったが、ひかるの疾風怒濤の活躍を見て、亡き愛弟子の影を重ね、大いに涙します。実はけっこう涙もろい性格です。日本一にはなれたが世界一は達成出来なかったので後継者育成をし、俊介に世界一の夢を託していました。
三好道場の合宿について
毎年強豪中学校を招いて三好道場で行われている合宿です。早朝ランニングを含み、勝ち抜きの個人戦と団体戦が行われています。この合宿は弱肉強食の構図になっていることが特徴的です。チームが弱ければ弱いほど、精神や肉体の負担がのしかかってくるような内容になっています。
早朝ランニングに時間がかかれば、まき割りのお手伝いをさせられます。勝ち抜き戦は最初からの登場で団体戦は、緒戦からの登場になります。強ければ強いほどペナルティが無く、勝ち抜き戦は最後のほうになり、団体戦はシードで途中の試合は省かれます。弱いほうにとっては、とても過酷ですが力をつけてのし上がれるチャンスがある合宿です。自分の現在の位置がはっきりわかります。
弱肉組
三好道場の合宿は団体チームのランク付けが徹底されていて、一番低いランクに入るのが、ひかるを擁する華荻三中の一、二年生のチームです。彼らはこの弱肉強食方式の三好道場合宿で、弱肉に相当するので他校のメンバーから「弱肉組」と呼ばれるようになりました。
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